欧米小売企業のDX技術導入による顧客体験充実度のランキング

デジタル技術を利用した業務イノベーションを進めるDX(デジタルトランスフォーメーション)は、昨今様々な分野で注目を集めていますが、前回のメールマガジン「物流革命〜マイクロ・フルフィルメントセンター」でご紹介した情報も、物流業界における新たなDXへの取り組みの事例でした。

このDXへの関心の高まりは小売業界も例外ではありません。

2016年に設立し、アメリカを拠点にDXに特化した企業コンサルティングや調査を行っている企業であるインシシブ(Incisiv.)社が、欧米の小売企業を対象にDXの成熟度を評価し、ランキング化した結果「Grocery Digital Maturity Benchmark, 2020」を発表しましたのでご紹介します。

これは欧米を代表する90の小売企業を対象に、DX技術の導入による以下の4つの重要な項目における充実度をスコア化してまとめたものです。

①     商品の見つけ易さ(ウェブ、ホームページの見やすさ、SNS連携度等)

②     注文のし易さ(オンラインカートの使いやすさ、決済の簡便さ等)

③     受け取りのし易さ(ピックアップ、デリバリー、返品のシステム等)

④     カスタマーサービス(全体のマネジメント、ヘルプデスク充実度、ロイヤリティやパーソナライゼーション等)

(※以下の表の右側の①〜④に該当)

この調査は昨年から始めたもので今回が2回目の公開ということですが、前回の調査結果について報告しておりませんでしたので、昨年の順位も入れたランキングを以下にご紹介します。

2020

順位

2019

順位

企業名

エリア

業態

①      

②      

③      

④      

1

30

Tesco(テスコ)

欧州

HM

3

4

16

1

2

1

BJ’s Wholesale Club(ビージェイズ・ホールセールクラブ)

北米

MWC

5

1

19

7

3

46

Publix(パブリクス)

北米

SM

17

5

3

8

4

-

Brookshire’s(ブルックシャーズ)

北米

SM

5

2

11

13

5

6

Target(ターゲット)

北米

DS

1

2

27

30

6

9

Costco(コストコ)

北米

MWC

11

6

4

13

7

7

Kroger(クローガー)

北米

SM

27

15

2

4

8

5

Albert Heijn(アルバート・ハイン)

欧州

SM

17

11

17

1

9

35

Schnuks(シュナックス)

北米

SM

11

18

7

22

10

52

Whole Foods Market(ホールフーズ)

北米

SM

7

14

9

35

11

15

H-E-B(エイチ・イー・バット)

北米

SM

17

8

12

22

12

19

Waitrose(ウェイトローズ)

欧州

SM

23

6

15

22

13

50

Morrisons(モリソンズ)

欧州

SM

3

22

12

52

14

3

Auchan(オーシャン)

欧州

HM

23

11

31

8

15

41

Prisma(プリズマ)

欧州

SM

17

22

24

17

16

17

Coop at Home(コープ・アット・ホーム)

欧州

SM

2

31

53

22

17

12

Wegmans(ウェグマンズ)

北米

SM

15

8

5

70

18

20

Sainsbury(セインズベリー)

欧州

HM

7

31

32

17

19

2

Carrefour(カルフール)

欧州

HM

11

41

33

4

20

42

Save Mart(セイブ・マート)

北米

SM

37

18

20

17

※業態:HM(ハイパーマーケット)、SM(スーパーマーケット)、DS(ディスカウントストア)、MWC(会員制卸売クラブ)

業態定義はIncisiv.社データに基づきます

以上が上位20社のランキングですが、英国のテスコを筆頭に著名な小売企業が名を連ねている中、15位には日本ではほとんど知られていないエストニアのスーパーチェーンのプリズマがランクインしているところが興味深いところです。

21位以下の主な企業は以下の通りです。

2020

順位

2019

順位

企業名

エリア

業態

①      

②      

21

23

Shoprite(ショップライト)

北米

SM

27

28

29

13

22

10

Walmart(ウォルマート)

北米

DS

45

37

1

30

23

45

Aldi(アルディ)

北米

DS

37

18

6

38

31

39

Sprouts Farmers Market(スプラウツ・ファーマーズ・マーケット)

北米

SM

17

18

35

63

37

21

Albertsons(アルバートソンズ)

北米

SM

57

40

10

30

38

14

Hy-Vee(ハイヴィー)

北米

SM

40

41

25

30

53

54

Ocado(オカド)

欧州

SM

11

63

70

70

61

65

Lidl(リドル)

欧州

DS

27

65

75

38

64

51

Esselunga(エッセルンガ)

欧州

SM

45

68

54

57

71

66

Mercadona(メルカドーナ)

欧州

SM

63

75

64

70

全体ランキング22位にウォルマートが入っていますが、③フルフィルメントの項目ではトップの評価を得ています。

独自のピックアップタワーやロッカーによる多彩な店舗ピックアップに加えて、今年の9月にはアマゾン・プライムに対抗したウォルマートプラス(Walmart+)という新たなサービスを開始しました。

これは年間98ドル(または月額12.95ドル)を支払うことで、オンラインで購入した食品をはじめとする商品を、何度でも無料で当日宅配してくれるというサブスクリプションサービスで、国内5,000店舗近いネットワークを持つ強みを活かしたサービスは、アマゾンにとっても脅威となるはずです。 (※一回の最低購入額は35ドルに設定されています)

インシシブ社によると、小売企業各社の第2四半期までの業績を精査した結果、新型コロナウイルスの影響下に於いて、今回のDXの成熟度と売り上げの結果の相関関係が非常に強いことが判明したということで、DX成熟度の高い

上位27社は、競合他社に比べて約2.2倍の年間成長率を達成しているということです。

また、同社の別の調査によると、新型コロナウイルス収束後にグロサリー(食品および日用品)の購入をどこでするかという問いに対して、以下のような結果が出ています。

購入経路

増加

今のまま

減少

店舗

18%

70%

12%

EC(パソコン)

25%

64%

11%

EC(モバイル)

26%

65%

9%

EC(アプリ)

32%

59%

9%

同社によると、2019年のグロサリー全体におけるオンライン売上は3.4%で、2020年は4.3%が見込まれるということですが、2025年には21.3%にまで拡大するだろうという予測をしています。これは新型コロナウイルスの発生前の予測よりも約60%も増えたということで、小売企業の生き残りのためのDX投資は必須であると結論付けています。

今回のレポートを踏まえ、今後も海外小売企業のDXへの取り組みに注目していきたいと思います。

(2020.10.15配信/記事作成:イオンコンパス(株)営業戦略部)

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