主にアメリカの流通小売りに関する最新情報をお伝えしている当メールマガジンですが、これまでコンビニエンス・ストア(※以降コンビニ)を取り上げたことがありませんでした。
今回イリノイ州シカゴに拠点を置き、BtoBベースでコンビニ、石油小売り、フードサービス業界等の市場調査、市場分析、経営アドバイス等のサービスを提供しているウィンサイト(Winsight, LLC)社が、アメリカにおけるコンビニ店舗数をベースにしたランキングを発表しているのでご報告します。
上位10社の顔触れは以下の表の通りです。
【アメリカ・コンビニ店舗数ランキングTOP10】
順位 | 企業名 | 店舗数 | 前年順位 |
1 | セブン・イレブン(7-Eleven) | 12,854 | 1 |
2 | アリマンタション・クシュタール(Alimentation Couche-Tard )= サークルK | 7,008 | 2 |
3 | ケーシーズ(Casey’s General Stores) | 2,470 | 3 |
4 | マーフィ(Murphy USA) | 1,712 | 5 |
5 | EGアメリカ(EG America) | 1,682 | 4 |
6 | GPMインベストメント(GPM Investments) | 1,404 | 6 |
7 | BPアメリカ(BP America) | 1,224 | 7 |
8 | エクストラマイル(ExtraMile) | 1,037 | 8 |
9 | ワワ(Wawa) | 988 | 9 |
10 | クイックトリップ(QuikTrip) | 963 | 10 |
※Winsight, LLC社データによる
断トツのトップはテキサス州アービングを拠点とするセブン・イレブンです。
アメリカのコンビニ市場は、日本と比べて特定企業による市場の寡占化が進んでいないと言われています。 確かに全米コンビニエンスストア協会(NACS)の最新データによると、アメリカのコンビニ店舗総数は2022年12月時点で150,174店舗で、セブン・イレブンのシェアはわずか8.6%程度となります。
しかし、非常に小さなコンビニ店舗やチェーンが非常に多いアメリカでのセブン・イレブンの売り上げベースでの市場シェアとなると、調査会社IBISWorld社のデータでは2022年度で約36%と非常に高くなっています。
ちなみに日本のコンビニ市場でもセブン・イレブンがトップを走りますが、2022年度の売り上げベース市場シェアは46.1%、店舗数ベースで38.4%とどちらも非常に高いのが特徴です。
また、日本では首位のセブン・イレブンに続いて2位のファミリーマート、3位のローソンの上位3社による店舗数シェアが93.1%という極端な寡占状態となっています。
アメリカのコンビニのもう一つの大きな特徴として、約80%の店舗(118,678店舗)がガソリンスタンドを併設しているということで、ガソリンの売上額がコンビニでの商品売り上げの約1.5倍を占めているという点が挙げられます。
日本でもガソリンスタンド併設のコンビニは増えてはいるものの、現在約16%程度で、アメリカに比べてまだまだ少ないのが現状です。
そもそもアメリカのコンビニは、後に現在のセブン・イレブンになるサウスランド・アイス・カンパニー(Southland Ice Company)が、1927年に年中無休で毎日16時間オープンしている小売店舗を始めたことから始まっており、朝7時から夜11時まで営業していたことから1946年に現在のセブン・イレブンという名称に変更されました。
1971年時点でガソリンスタンドを併設していたコンビニはわずか7%程度でしたが、その後2回に渡る世界的オイルショックにより、ガソリン代節約のため買い物と給油をワンストップでできるコンビニの需要が高まり、その後10年で一気にガソリンスタンド併設型コンビニが増えたという経緯があります。
この流れは現在も変わっておらず、トップのセブン・イレブンは、2018年にガソリンスタンド併設型コンビニを展開していたスノコ(Sunoco)1,030店舗、2021年にはガソリンスタンドを運営するマラソン・ペトロリウム(Marathon Petroleum)社が展開していたコンビニチェーンのスピードウェイ(Speedway)約3,800店舗を買収するなど、ガソリンスタンド併設型コンビニの拡大を進めてきております。
なお、4位に入っているマーフィ(Murphy USA)は、ガソリンスタンド併設型コンビニというより、コンビニ併設型のガソリンスタンドという位置づけの企業で、多くのガソリンスタンドをウォルマートの店舗敷地内あるいは隣接地にて展開することで業績を伸ばしています。
イギリス拠点の世界的市場調査会社ユーロモニター(Euromonitor)社のデータによると、アメリカの全グロサリー売上額に占めるコンビニ業態のシェアは約10%(ガソリン売り上げは除く)で、日本のコンビニの約21%と比べるとコンビニの存在感が低い状況ですが、今後5年間のCAGR(年平均成長率)は6.6%で、コンビニ以外の5.5%を上回る見通しとなっています。
これからもコンビニ業界の動向に注目していきたいと思います。
(2023.12.26配信/記事作成:イオンコンパス(株)海外仕入部)