全米小売業協会(NRF-National Retail Federation)が、英国ロンドンを拠点として90ヶ国で活動する世界的マーケティング企業のカンター・グループ(Kantar Group)の協力を得てまとめた「Top 50 Global Retailers 2024 / 世界の小売企業トップ50」を公開しました。
最低3ヶ国以上でビジネスを展開している小売企業が対象で、カンター・グループにより特別に構成されたアナリストチームが、様々な情報源(年次報告書、報道発表、公的書類、消費者専門調査結果等)からそれぞれの小売企業の2023年初頭からの小売収益と業績に関する情報を収集・分析し、カンター・グループが作成した独自のポイントシステムによりランキングを決定しました。
このポイントシステムの大きな特徴の一つは、それぞれの小売企業の拠点国以外における国際事業に高いポイントを付与し、国内事業へのポイントは低く設定されている点で、よりグローバルな事業展開をして成功している小売企業が有利になります。
したがって、海外でのパフォーマンスが高く評価された企業が多くのポイントを獲得するため、順位は必ずしも総収益の多寡に比例しません。
最もグローバルな視点で成功している小売企業をランキング化したものとなります。
トップ10ランキングとその他トップ50に選ばれた主な小売企業は以下の通りです。
トップ10小売企業
順位 | 企業名 | 拠点国 | 業種 | 総収益(10億ドル) |
1 | ウォルマート(Walmart) | 米 | SM | 628.6 |
2 | アマゾン(Amazon) | 米 | EC | 355.1 |
3 | シュバルツ・グループ(Schwarz Group) | 独 | DS | 176.4 |
4 | アルディ(Aldi) | 独 | DS | 145.4 |
5 | コストコ(Costco) | 米 | MWC | 234.0 |
6 | アホールド・デレーズ(Ahold Delhaize) | 蘭 | SM | 97.1 |
7 | カルフール(Carrefour) | 仏 | SM | 89.7 |
8 | セブン&アイ(Seven & I) | 日 | CVS | 84.9 |
9 | ホーム・デポ(The Home Depot) | 米 | HC | 151.6 |
10 | イケア(IKEA) | 蘭 | HF | 45.6 |
※NRF, Kantar Groupデータによる
その他主な小売企業
順位 | 企業名 | 拠点国 | 業種 | 総収益(10億ドル) |
11 | ウォルグリーン(Walgreens Boots Alliance) | 米 | Dgs | 12.66 |
12 | レーヴェ(REWE) | 独 | SM | 18.01 |
15 | カジノ(Casino) | 仏 | SM | 21.73 |
16 | アリババ(Alibaba) | 中 | EC | 2.58 |
19 | メトロ(Metro) | 独 | HM | 21.62 |
22 | イオン(AEON) | 日 | SM/SC | 4.62 |
24 | オーシャン(Auchan) | 仏 | SM | 11.80 |
32 | ファースト・リテイリング(Fast Retailing) | 日 | EC/SS | 11.39 |
34 | ベスト・バイ(Best Buy) | 米 | CE | 3.20 |
41 | ファミリーマート(Family Mart) | 日 | CVS | 4.88 |
50 | ローソン(Lawson) | 日 | CVS | 2.51 |
※NRF, Kantar Groupデータによる
トップはアメリカを拠点に世界19か国で店舗およびeコマースを展開しているウォルマートでした。海外での店舗数は5,230店舗と国内の店舗数とほぼ同数を展開しており、世界一の小売企業としての地位を堅持しました。
特にメキシコやチリにおけるeコマースへのインフラ投資により、低所得の消費者でも利用しやすいプラットフォームが構築されたことなどが評価されました。
2位はアマゾンで、世界22か国で展開しているeコマースは堅調で、二けたの成長を記録しました。アマゾンのバナーを掲げる不採算店舗を軒並み閉店したり、自社マーケットプレイス(Amazon.com)における手数料やサードパーティ事業者に対する対応等同社の商習慣に対してEU及び米国政府の監視が厳しくなるなどネガティブな要因があるものの全体的には増収となりました。
3位はドイツを拠点としているシュバルツ・グループで、世界32ヶ国で14,000店舗以上を展開している多国籍企業で、リドルやカウフランド等が代表的バナーとなります。
主に西ヨーロッパ市場における店舗およびeコマースの拡大に注力しており、自社ブランド製品の拡大や、サプライチェーンの自動化と業務のデジタル化等により収益を伸ばしたと報告されています。
カンター・グループによると、小売業界における人手不足はゆっくりではあるものの解消されはじめており、人材の定着によって店舗での顧客満足度が上がりつつあるということです。
一方でデジタル化の推進によるオムニチャネルの構築は未だ成長分野であり、引き続きシームレスなショッピング体験を提供して顧客満足度を上げることが世界中の小売企業に求められているということで、今後セルフ・チェックアウト等への投資が増えていくだろうと述べています。
2024年はこのオムニチャネルによる差別化への取り組みが活発化するとみられ、今回の企業ランキングにも大きな変動が予測されるということです。
1年後のランキングがどのようになるのか注視していきたいと思います。
【備考】
ランキング中の業種表記は以下をご参照ください。
SM スーパーマーケット
EC オンライン小売
DS ディスカウンター
MWC 会員制ホールセール・クラブ
CVS コンビニエンスストア
HC ホームセンター
HF ホームファッション
Dgs ドラッグストア
HM ハイパーマーケット
SC ショッピングセンター
SS スペシャルティ・ストア
CE 家電量販店
(2024.4.19配信/記事作成:イオンコンパス(株)海外仕入部)
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