1.アマゾン

1‐1.即日配達サービスの競争激化!アマゾンとグーグル両社揃ってサービス拡大

アマゾンの当日配達サービスの対象地域は、これまでロサンゼルス、フェニックス、サンフランシスコ、シアトル、シカゴ、ボストンのみでしたが、ボルチモア、ダラス、インディアナポリス、ニューヨーク、フィラデルフィア、ワシントンDCにも拡大、全米12都市で利用可能となることが2014年8月に発表されました。当日配送の注文は主に午前中まで、対象商品は新作のゲームソフトやバッテリー、スピーカー、メモリーカード、タオル、シャンプー、工具など多岐にわたり、100万アイテム以上です。送料は、プライム会員(年会費99ドル)で5.99ドル、プライム会員以外は1つ目のアイテムが9.98ドル、2つ目から0.99ドルとなっています。

 

一方、グーグルでは「グーグル・ショッピング・エクスプレス(グーグルがチェーンストアや店と組み、一部地域で展開する当日配送サービス)」の提携先に書籍チェーン最大手バーンズ&ノーブルが加わったことが発表されました。同サービスは約1年前から始まっており、これまでの主な提携先は、コストコ、ステープルズ、ターゲット、ウォルグリーンなどです。配送対象地域は、ニューヨークのマンハッタン、ウエストロサンゼルス、サンフランシスコで、現時点の送料は無料です。

 

オンライン・リテーラーによる即日配達サービスの競争が激化する一方で、アメリカ小売業で主流になりつつあるストアピックアップも、この競争に対抗するべく、無料ストアピックアップを取り入れる企業が増えています。また、ストアピックアップには、在宅時間を気にする必要がないことや忘れたものを買い足せるなどの利点があり、各社様々な実験をしながら、そのサービスを拡充しています。

 

1‐2.中小小売店向け決済端末を発売

現金や電子マネーでの支払いが普及している日本に対し、クレジットカード社会の米国では、中小規模の小売店の間で手数料の安い決済端末へのニーズが高まっています。このような背景を受け、2014年8月アマゾンがスマートフォンやタブレットの端末に装着し、クレジットカードなどを読み取ることで決済が出来る小型端末の発売を発表。小売店が負担する手数料は、業界最低水準の2.5%で、2014年10月末までに登録をすると来年の手数料は1.75%となるとされています。決済代金は、一営業日以内に小売店側の指定口座に振り込まれる仕組みです。

 

決済端末は、アマゾンの専用端末以外にも米アップルなどの他社タブレット端末等でも利用可能で、顧客の購買行動を分析する機能も搭載されています。さらに、アマゾンの顧客窓口(24時間対応)では、小売店向けにサービスを使いこなすための技術的な指導を提供するとしています。アマゾンとしては、あらゆる切り口から消費行動を見極めるため、ネットだけではなく、実店舗の購買情報を集める狙いもあります。

 

こうした簡易決済端末には、すでに米決済大手ペイパル(手数料2.7%)、米決済ベンチャーのスクエア(手数料2.75%)が参入していますが、今回のアマゾンの参入により、手数料の引き下げなど競争が激化する見通しです。

 

1‐3.注文に特化した専用端末「アマゾンダッシュ」を導入

生鮮食品宅配サービス「アマゾンフレッシュ」(※)の利用者向けに導入された「アマゾンダッシュ」は、WiFi経由で「アマゾンフレッシュ」のアカウントとリンクをする注文専用の端末で、テレビのリモコンに似た形状にマイクとバーコードスキャナが装備されています。マイクボタンを押して音声で入力をするか、端末のスキャナで商品バーコードをスキャンすると、その商品が「アマゾンフレッシュ」のショッピングカートに入力され、スマホやタブレットなどから具体的な製品や数量などを決定し、注文する仕組みです。注文専用の端末ではありますが、従来のスマホでアプリを立ち上げ、商品を検索し、注文する、という買い物の手間を省き、思いついたその時に、簡単に・手軽に商品を注文することを実現しています。(端末自体は、2014年4月より希望者に無料で配布)


(※)アマゾンフレッシュ…アマゾンによる生鮮食料宅配サービスで、シアトルやサンフランシスコ、ロサンゼルス等で展開。注文時間に応じて、即日または翌朝に配達。年会費は299ドル。

 

1‐4.メーカー倉庫からの直接配送

2013年10月、P&Gとの戦略的パートナーシップを発表。P&Gの物流倉庫にアマゾン用の倉庫を間借りし、メーカーの物流倉庫からの直接配送を開始しました。メーカーにとっては、アマゾン倉庫までの配送コスト削減となり、さらにアマゾンの定期購入サービスを活用することで顧客の囲い込みやネット通販の売上拡大にもつながります。アマゾンにとっては、配送・在庫管理コストを削減となり、その結果、低価格販売が可能となります。また、メーカーの倉庫は便利な立地にあることが多いため、迅速な配送も可能となり、より早く消費者の元に商品を届けることが出来ます。これにより、アマゾンは2007年から開始している定期購入サービス「サブスクライブ&セイブ」を強化。同サービスは、定期的な商品配達だけではなく、販売価格から最大15%引きで購入が可能なことから急速に利用者が増えています。また、対象商品もオフィス用品、美容品、ベビー用品だけではなく、食品(生鮮品は除外)やサプリメントにまで拡大しています。

 

こうした動きを受け、「サムズ・クラブ」(ウォルマートの会員制ホールセールクラブ)でも、2014年3月より、定期的に購入する商品を自動注文できる購買予約サービス「マイ・サブスクリプション」の実験を開始。さらに「ターゲット」でも2014年4月、2013年9月に開始した定期購入サービスのアイテムをオフィス用品やペット用品にまで拡大し、その数を150から1,600に増やしています。

 

1‐5.ロボット物流システムの増設を発表

2014年5月、ロボット物流システム「キバ」を10,000台に増やす計画を発表。現在、3カ所のフルフィルメントセンターで1,382台が稼働していますが、今年度末までに10倍近く増やし、注文処理態勢の強化を図ります。「キバ」はアマゾンが2012年に7.75億ドルで買収したロボットシステムで、ロボットがピッカースタッフのところまで在庫を持ってくる仕組みです。導入企業の中には、注文から発送までにかかる時間が48分間から12分間に大幅に短縮した例もあります。従来型のコンベヤーの設置には12〜18ヶ月かかるのに対して、同システムは数週間で導入可能で、さらに物流センター内に照明や冷暖房をつける必要がないため、光熱費も節約出来るとしています。

「ホーム」ページ 文字のフォントやサイズは控えめに、色使いはシンプルに、直感的な操作性に適したデザインへ
「商品」ページ 商品の画像を大きく、商品説明やレビューは見やすく、文字やカラーを控えた注文しやすい画面へ。さらに購買意識を刺激するため、関連商品が同時に表示される仕組み
「チェックアウト」ページ(決済用) 配達オプションは、これまでの「急ぎ」「早め」「標準」「お値打ち」といった配達スピード表記から「宅配」「ストアピックアップ」表記へ
3.ダラーツリー/ダラーゼネラル

ファミリーダラーに対して、ダラーツリーは買収発表・ダラーゼネラルは株式公開買い付けを発表

一時は成長業界と言われ、ウォルマートなどから価格志向の顧客を奪って急成長してきたダラー・ストア・チェーン業界ですが、2014年7月ダラー・ストア・チェーン業界第3位のダラーツリーが同業界第2位のファミリーダラーを、総額85億ドルで買収することを発表しました。この買収が実現した場合、ダラーツリーの店舗数は国内48州とカナダ5州に約13,000店、売上高は180億ドル、従業員数は14.5万人となります。

これに対し、2014年8月18日、業界第1位のダラーゼネラルがファミリーダラーに対して、総額89.5億ドルで買収提案を行ったことを発表しました。ダラーゼネラルは、ファミリーダラーのダラーツリーへの違約金も用意する、としています。両社が統合した場合、その店舗数は国内46州に約20,000店(独占禁止法に接触しないよう、700カ所以上の店舗は売却される予定)、売上高は280億ドル、従業員数は16万人となります。

全て1ドル均一・郊外出店型のダラーツリーに対して、ファミリーダラーは10ドル以下の価格設定・都市部出店型、とこうした違いからダラーツリーのファミリーダラー買収による相乗効果はあまり大きくないとされています。また、過去5年以上にわたって、既存店ベースが連続プラスと安定した成長を続けてきたダラーツリーに対して、ファミリーダラーは3四半期連続でマイナスになっており、2011年からの急速な店舗拡大によるオペレーションのずさんさが指摘されています。買収後も別々の店舗名のままで展開予定ですが、今回の買収によるファミリーダラーの再建にも注目が集まります。

ファミリーダラーは、7月下旬にダラーツリーからの買収に同意したばかりですが、ダラーゼネラルの提示額は総額89.5億ドルでダラーツリーの提示額の総額85億ドルを上回っています。都市部に店舗が少ないダラーゼネラルにとって、都市部出店型のファミリーダラーの買収は、同地域の市場拡大にもつながります。

なお、2014年8月21日時点では、ファミリーダラーは独占禁止関連法規への懸念を理由にダラーゼネラルによる買収提案を拒否、改めてダラーツリーによる買収提案への支持を表明したと報道されています。

買収提案拒否を受け、ダラーゼネラルは買収額の引き上げを9月2日に発表。今回の提示額は総額91億ドル、さらに独占禁止法に接触しないよう売却予定の店舗数も700カ所以上から1,500カ所に引き上げられました。ファミリーダラーはこの修正提案を検討するものの、ダラーツリーからの買収提案を受けるという決定は変えていない、としていました。そして9月5日、ファミリーダラーはダラーゼネラルの修正提案を拒否。これを受け9月10日、ダラーゼネラルは一般株主に直接訴えるべく、株式の公開買い付けを行うことを発表しました。発表によると、ファミリーダラーの1株に対して80ドルを現金で支払い(買い付け期間は10月8日ニューヨーク時間の午後5時まで)、また独占禁止法違反に接触しないかどうかの審査を連邦取引委員会に対して要求しています。
ダラーゼネラル、ダラーツリー両社によるファミリーダラーの買収劇は、今後の行方に注目が集まります。

4.ホールフーズ

新成長戦略を発表

第3四半期決算と合わせて発表された新戦略の中で、2014年に新たに38店舗をオープンし、2017年度中に500店舗を目標とすることが明かされました。同社は現在、388店舗を展開しており、長期目標として1,200店舗を掲げています。また、来年にかけて、オープンから10年以上経過している店舗の7割を改装する計画です。さらに、9月からは同社初となる全米規模の広告キャンペーンを開始予定です。同社の「ホールペイチェック(給料の大半が高額なオーガニック商品に消える、という意味)」というあだ名や、「ホールフーズは高い」というイメージを払拭し、さらに認知度を向上させる目的です。他にも「シーフード・サステナビリティ格付け」、「家畜飼育5段階評価システム」、「洗剤の環境格付けシステム」などの格付けシステムに青果と花の新たな格付けシステムを追加することが発表されました。有害生物の管理や農業労働者の福祉、ハチミツなど授粉媒介の保護を基準として採用する、としています。

 

また、ウォルマートなど各社で行われている宅配サービスですが、同社は外部企業と連携し、ストアピックアップと併せて12〜15カ所でテストを行います。さらに定額制で定期的に商品を届けてくれる定額購入サービスも今年末までに立ち上げ、来年より代表的な商品で発送を開始する予定です。モバイルの新アプリや、ロイヤリティ・プログラムの導入も検討されており、ロイヤリティ・プログラムは今年中に実験を開始、来年のホリデーシーズンまでに全米で導入することが予定されています。

 

第3四半期は増益増収(売上高は10.4%増加の33.8億ドル、純利益は10.6%増加の1億5,100万ドル)の同社ですが、既存店の売上成長が鈍化していることから、店舗の拡大や全米規模の広告キャンペーン、宅配サービス、ストアピックアップ、新アプリ、ロイヤリティ・プログラムなど、あらゆる販路からの戦略で巻き返しを図ります。

2014.08.22/09.25

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