アメリカのビジネスメディア大手CNBCによると、米国の食品スーパー業界では現在、AIを活用した食品ロス削減の取り組みが、コスト削減から利益創出へと大きく進化しているということです。
アメリカでは販売食品の約30%が廃棄されており、その損失額は年間約180億ドル規模に達しており、この巨大なロスをいかに回収するかが、近年の重要な経営課題となっています。
AIが支えるダイナミックプライシング
その中核となっているのが、AIによるダイナミックプライシング(Dynamic Pricing)です。ダイナミックプライシングとは、需要供給、時間や状況に応じて商品やサービスの価格をリアルタイムで変動させる戦略的な価格設定手法です。
従来の値引きは、タイミングや割引率が現場任せであり、利益を削る要因となっていましたが、現在は、賞味期限、在庫量、販売速度、店舗ごとの需要、さらには天候や曜日といった要素をAIがリアルタイムで分析し、売り切るための最適価格を自動で算出する仕組みが導入されています。これにより、廃棄されるはずだった商品を適正な価格で販売し、利益へと転換することが可能になりつつあります。
Flashfoodが生む流通モデル
具体的な事例として注目されるのが、クローガー(Kroger)が導入しているFlashfood社のアプリです。
(公式ページ:Flashfood)
Flashfoodは食品スーパーと連携し、賞味期限が近い余剰食品をアプリ上で割引販売するマーケットプレイス型スタートアップ企業で、2016年にカナダで設立されました。現在は、Krogerをはじめ、マイヤー(Meijer)、Loblaw、Giant Eagle、Save a Lot、Food Lion、ハイヴィー(Hy-Vee)等多くの小売企業と契約をしており、アメリカ国内2,000店舗以上で同社のシステムが導入されています。
アプリ上で割引販売した商品を顧客が事前購入した上、店頭で受け取る仕組みで、単なる値引きではなく、廃棄寸前の商品をデジタル上の在庫として再流通させる点に特徴があります。
小売側は廃棄ロスを削減し、消費者は最大50%程度の割引で食品を購入できる仕組みで、食品廃棄削減と家計支援を同時に実現しています。また、店舗への集客や追加購買を促進することで、小売企業の収益改善にも寄与するロス削減および利益創出型モデルとして急速に普及しています。
この取り組みにより、クローガーでは食品ロスを約27%削減するとともに、来店頻度や客単価の向上にもつながっています。
AI導入の必要性
急速なAI導入の背景には、ディスカウント業態の台頭や消費者の価格志向の高まりがあるということで、単純な低価格競争ではなく、必要な商品だけ最適に値引きする戦略が求められており、AIはその実現手段として不可欠な存在となっています。
今後は電子棚札との連動や顧客ごとのパーソナライズ価格などにも進展し、在庫・価格・顧客を一体で最適化する時代に入ると考えられます。食品ロス削減はもはやサステナビリティ施策にとどまらず、競争力そのものを左右する収益戦略へと変わりつつあります。