ECの利便性競争は、「翌日届く」から「欲しい時にすぐ届く」段階へ移りつつあります。
ウォルマート(Walmart)が、商品を注文から30分以内に届ける高速配送を全米で拡大しています。ウォルマートが進める30分配送は、米国の大手小売が店舗網を活用してラストワンマイルを再設計している象徴的な取り組みです。
30分配送を全米で拡大
ウォルマートは2026年5月、店舗から専用車などで商品を届ける30分以内配送を33都市圏で開始し、その後、ナッシュビル、オマハ、サンアントニオ、フロリダ州ウィンターヘイブン等を加え、38都市圏へ拡大しました。食品、日用品、医薬品、家電など10万点以上が対象で、有料会員Walmart+の利用者は、通常の配送料に追加料金10ドルで利用できます。
店舗網が高速配送の基盤に
追加料金を払ってでも早く受け取りたいというニーズは高く、2026年度第2四半期には、3時間以内の高速配送に関連する流通取引額が前年同期比48%増加しました。追加料金による高速配送注文は、店舗出荷型配送全体の37%を占め、過去最高を記録し、 店舗を起点とする配送売上も約40%増加しています。
この高速配送を支えるのが全米4,600店舗以上のネットワークです。ウォルマートのEC注文では、ラストワンマイル配送の約80%を店舗が担い、高速配送については100%が店舗から出荷されています。店舗を商品販売の場だけでなく、地域密着型の物流拠点として活用しています。
ドローン配送も都市圏へ拡大
一方、空からの30分配送も拡大しています。
弊社トレンドピックアップ記事「ウォルマート(Walmart)がアトランタでドローン配送開始」でもご紹介した通り、ウォルマートはアルファベット傘下のウィングと提携し、テキサス州ダラス・フォートワース都市圏でドローン配送の実績を積み重ねてきました。
2025年12月には最初の新たな大都市圏としてジョージア州アトランタ都市圏の6店舗でサービスを開始しました。さらに2026年7月にはフロリダ州グレーター・オーランドへ進出し、食品や日用品など数千品目を最短30分で届けるサービスを提供しています。
今後、ドローン配送を150店舗追加し、4,000万人以上が利用可能な体制を整える計画ということで、2027年には270店舗以上に広げ、フィラデルフィア、フェニックス、サンディエゴ、サンフランシスコなどにも展開する予定です。
商品・距離・緊急度で配送手段を使い分け
ウォルマートは、すべての注文を一つの配送方法で処理しようとしているわけではなく、まとめ買いや重量物は専用車、軽量で緊急性の高い商品はドローン、急がない注文は通常配送と、商品の量、重量、距離、顧客の支払意思に応じて配送手段を使い分けています。
つまり、店舗出荷、専用車、ドローンを組み合わせ、ラストワンマイルを「一律の配送網」ではなく「商品特性に応じた配送ポートフォリオ」として設計していると見ることができます。
小売業にとっては、単に配送スピードを競うのではなく、店舗在庫・配送手段・顧客ニーズをどう組み合わせるかが、今後のEC戦略の重要なテーマになりそうです。