トレーダー・ジョーズ(TRADER JOE’S)

トレーダー・ジョーズ(TRADER JOE’S)は、米国カリフォルニア州モンロビアに本社を置く食品スーパーマーケットチェーンである。1958年に創業者であるジョー・コロンビー(Joe Coulombe)がコンビニエンスストアの形態で前身として創業した。1967年にトレーダー・ジョーズの屋号となり、現在は限定された品揃え(リミテッドアソートメント)プライベートブランド主体の商品構成を特徴としている。

2025年11月時点で、同社は全米42州とワシントンD.C.で608店舗を展開しており、エリアは本土48州(アラスカ・ハワイを除く)に限定されている。店舗網は特にカリフォルニア州に集中しており、同州だけで200店超を擁し、全店数の約3分の1を占める。

業態としては、フルラインの総合スーパーとディスカウントストアの中間に位置づけられ、「小型~中型・限定品揃え・高比率PB・お値打ち価格」を組み合わせたフォーマットで、米国のグロサリー市場に独自のポジションを築いている。

なお、日本国内では”トレジョ”という呼ばれ方をされるほど同社のエコバッグがデザイン・コレクション性・お土産品としての観点などで人気を博している。

沿革とオーナーシップ

トレーダー・ジョーズの前身は、1958年にJoe Coulombeがカリフォルニア州で立ち上げた「Pronto Markets」というコンビニエンスストアチェーンである。1967年、同州パサデナに「TRADER JOE’S」1号店を開業し、現在の屋号とコンセプトがスタートした。なお、この屋号は、創業者の名前(ジョー)から来ている。

1979年には、ドイツのディスカウントチェーンALDIを創業したアルブレヒト家(Aldi Nord側)のファミリー財団が同社を買収。現在は、ALDI Nordとは「姉妹会社」のような位置づけであり、ともにアルブレヒト家の複数の財団(Markus/Jacobus/Lukas Stiftung)に所有されている。

上場企業ではなく非公開企業(プライベートカンパニー)であるため、売上や利益などの詳細な財務情報は限定的だが、米国の食品スーパーの中でも中堅~準大手クラスのボリュームを持つチェーンといわれている。

出店状況と店舗フォーマット

出店エリアと店舗数

2025年11月時点で、トレーダー・ジョーズは全米42州+ワシントンD.C.で約608店舗を展開している。出店州は、アラバマ、アリゾナ、カリフォルニア、テキサス、ニューヨークなど42州とワシントンD.C.である。
※未出店州はアラスカ・ハワイ・ミシシッピ・モンタナ・ノースダコタ・サウスダコタ・ウエストバージニア・ワイオミングの8州。

特にカリフォルニア州が最重要市場で、同州だけで200店超を擁し、全店数の約3分の1を占める。続いてニューヨーク、フロリダ、テキサスなど大都市圏・人口集中州での出店が目立つ。

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店舗サイズとフォーマット

店舗の売場面積は、約10,000〜15,000平方フィート(約930〜1,400㎡)の小型〜中型クラスが中心であり、一般的な米国郊外型スーパーよりコンパクトなフォーマットである。

取扱SKU数は約4,000SKU前後に絞り込まれており、一般的なフルラインのスーパーマーケットが4万〜5万SKU程度を扱うのに対し、その1割未満という「リミテッドアソートメント」型の品揃えとなっている。

この省SKU・中型フォーマットにより、店舗オペレーションを簡素化し、投下人員・在庫・物流コストを抑える一方で、高回転の商品に集中するモデルを取っている点が特徴である。

商品構成とプライベートブランド戦略

トレーダー・ジョーズの最大の特徴は、圧倒的に高いプライベートブランド比率にある。同社の公式ポッドキャスト「Inside Trader Joe’s」によれば、「取り扱い商品の80%超がプライベートブランド」であり、ナショナルブランド品はごく一部にとどまる。

商品構成は、以下のカテゴリーを中心に構成されている。

  • 冷凍食品:冷凍ピザ、アジアンフード、簡便調理用惣菜など
  • チルド惣菜・デリ:サラダ、ラップサンド、スープ類
  • 加工食品・スナック:シリアル、ナッツ、チョコレート、スナック菓子
  • オーガニック・ナチュラル系商品:オーガニック野菜、プラントベース食品など
  • アルコール:ワイン、ビール(州の規制により取扱いは異なる)

多くの商品は「Trader Joe’s」ブランドを冠しているが、エスニックフードやカテゴリー別にユニークなブランド名を使うケースもあり、パッケージデザインやネーミングの遊び心がファン層を惹きつける要因となっている。

さらに、期間限定商品や季節商品が頻繁に投入され、「宝探し感(Treasure Hunt)」のある売場づくりを行っていることも特徴である。

価格戦略とオペレーションの特徴

低価格戦略とマージン構造

トレーダー・ジョーズは、クーポンやポイントカードなどのプロモーションをほとんど行わず、「毎日お買い得」を志向している。

プライベートブランド比率を高めることで、中間マージンを圧縮しやすい・仕入れ先との直接取引により調達条件を有利にできる・SKUを絞ることで、1 SKUあたりの仕入れ数量を増やしスケールメリットを享受できるといった構造を作り、「高品質だが手頃な価格」というポジションを実現している。

SKU削減と在庫オペレーション

SKU数を約4,000に抑えることで、在庫管理・棚替え・発注オペレーションが大幅に簡素化されている。トレーダー・ジョーズはトラックから棚へ直接商品を出す「truck-to-shelf」型の運用を行い、バックヤード在庫を最小化することで在庫コストと作業負荷を軽減しているとされる。この結果、売場面積・SKU数を抑えながらも、高い在庫回転率と粗利率を両立するモデルを構築している点が、同社の収益性を支える重要な要素となっている。

オンライン販売を行わない戦略

トレーダー・ジョーズは、ECサイトや宅配サービスを展開せず、店頭販売に特化している

同社は公式ポッドキャストなどで、「店舗そのものがブランド体験であり、商品はその一部である」と繰り返し述べており、オンライン販売を行うことはブランド価値の毀損につながりかねないとのスタンスを示している。

米国のグロサリーチェーンがオンライン比率拡大に舵を切る中で、あえて「非EC」で差別化している点も、同社のユニークな戦略と言える。

顧客体験とブランド評価

トレーダー・ジョーズの店舗は、港町や航海をイメージしたナチュラル&ノーティカル(海洋)テイストの内装や、従業員のアロハシャツ姿など、独特の世界観を持っている。従業員は「Crew Members(乗組員)」と呼ばれ、フレンドリーな接客で知られる。

店内の壁面には、その地域のランドマークや風景を描いた壁画が描かれるなど、各店舗が「近隣コミュニティのローカルストア」であることを意識した演出が徹底されている。

顧客評価面では、米国の顧客満足度調査「American Customer Satisfaction Index(ACSI)」や、各種の小売業ランキングでスーパーマーケット部門のトップクラス常連となっており、2020年代に入ってからも競合チェーンと比べて高いスコアを維持している。このような高い顧客満足度と熱心なファンコミュニティは、商品そのものだけでなく、店舗体験やブランドストーリーを含めた総合的な顧客体験(CX)によって支えられていると評価されている。

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企業情報

会社名 トレーダー・ジョーズ(Trader Joe's)
本社所在地 カリフォルニア州モンローヴィア
店舗数 608店舗(2025年)
主な出店エリア 全米42州+ワシントンDC
公式HP https://www.traderjoes.com

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