近年、フランスの食品小売市場では、店舗の買収・売却や業態転換が相次ぎ、主要グループの勢力図が大きく変化しています。市場シェアの変化だけでなく、その再編がパリの実際の売場をどう変えているのかを、今回はモノプリ(Monoprix)やフランプリ(Franprix)の最新店舗を手掛かりに、フランス都市型小売の現在地を見ていきます。
最新ランキングに見る主要各社の現在地
世界最大級の消費者購買データ・テクノロジー企業Worldpanel by Numerator(旧Kantar Worldpanel)がまとめた2026年第8期の市場シェアによると、E.ルクレール(E.Leclerc)が24.3%で首位を維持し、カルフール(Carrefour)が21.6%、アンテルマルシェ(Intermarché)やネットー(Netto)を展開するル・ムスクテール(Les Mousquetaires)が18.0%で続いています。
フランス食品小売市場シェアランキング(2026年7/13~8/09)がこちらです。
| 順位 | 企業名 | 市場シェア | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 1 | E.ルクレール(E.Leclerc) | 24.3% | 0.0 |
| 2 | カルフール(Carrefour) | 21.6% | ▲0.2 |
| 3 | ル・ムスクテール(Les Mousquetaires) | 18.0% | △0.4 |
| 4 | コーペラティヴ・U(Cooperative U) | 13.1% | △0.8 |
| 5 | オーシャン(Auchan Retail France) | 8.5% | ▲0.5 |
| 6 | リドル(Lidl) | 7.6% | ▲0.2 |
| 7 | カジノ・グループ(Casino Group) | 3.0% | ▲0.1 |
| 8 | アルディ(Aldi) | 2.6% | △0.1 |
この市場シェアランキングは、2026年7月13日~8月9日の日用消費財およびセルフサービス方式で販売される生鮮食品の購入額をまとめたものです。
上位4グループだけで市場の77.0%を占めており、なかでもE.ルクレール、ル・ムスクテール、コーペラティヴ・Uという独立小売業者による合計シェアは55.4%に達しており、フランス食品小売市場における大きな勢力となっています
カジノ社の苦境と都市型への大転換
一方、注目されるのがカジノ・グループです。かつてフランスを代表する総合食品小売グループだった同社のシェアは、2018年の11.4%から現在3.0%まで縮小しています。
これは単なる販売不振だけによるものではなく、カジノ・グループが経営再建に伴い、大型店の大部分を競合他社へ売却し、現在はモノプリ(Monoprix)やフランプリ(Franprix)を中心とする都市型・近隣型小売グループへと大きく姿を変えてきたという背景があります。
大型店売却で進む事業再編
カジノ・グループは、積極的な企業買収によって事業規模を拡大してきましたが、その過程で膨らんだ債務と市場シェアの低下により、深刻な経営危機に陥りました。 2024年には財務再建を進めるため、カジノブランドで運営していたハイパーマーケットとスーパーマーケット計366店舗を、アンテルマルシェ、オーシャン、カルフールなどに売却し、グループの事業構成は大きく縮小・再編されました。
「Renouveau 2030」で都市型・近隣型小売へ
現在、カジノグループが進めているのが、経営再建計画「Renouveau 2030」という、経営再建と持続的な成長を目指して進める2030年までの中期戦略です。大型店売却後の事業を都市型・近隣型小売へ再構築し、日常の食品購入、テイクアウト、生活サービスの3分野を中心に、店舗網の刷新と収益力の回復を図ろうというもので、同計画では、今後の成長分野として次の3点を掲げています。
- 食品・日用品を身近な店舗で購入する「日常使いの買い物」
- 総菜や弁当、テイクアウトなどの「簡便・即食ニーズ」
- 買い物と併せて利用できる「暮らしに身近な生活サービス」
郊外の大型店で一度に多くの商品を購入してもらう従来のモデルから、都市生活者が日常的に立ち寄り、食事やサービスにも利用する近隣型店舗への転換です。その中心的な役割を担っているのが、食品、衣料、ホーム、ビューティーを展開するモノプリと、食品・即食を中心とする小型店フランプリです。
パリで進化するカジノ・グループの都市型店舗
パリの都市型小売では、単に商品を販売するだけでなく、都市生活者の暮らし方や日々のニーズに合わせて、店舗の役割を広げる動きが進んでいます。
なかでも、カジノ・グループ傘下のモノプリとフランプリは、それぞれ異なる方向から都市型店舗の進化を進めています。
モノプリ:都市生活を提案するライフスタイル型店舗
フランプリ:日常の食と生活サービスを担う近隣拠点
ここからは、両ブランドの店舗事例から、その具体的な取り組みを見ていきます。
モノプリが提示する新たな都市型店舗
モノプリは、フランスの都市型小売を代表する店舗ブランドで、食品だけでなく、衣料、化粧品、生活雑貨、ホームファッションなどを組み合わせ、フランスらしい都市生活を提案することを特徴としています。
その店舗改革を象徴する一つが、パリ9区のMonoprix Place Blanche店です。
Monoprix Place Blanche
◆住所:52 rue Fontaine, 75009 Paris
同店は1932年に開業したパリ最初のモノプリで、モンマルトルの世界的老舗キャバレーとして有名なムーラン・ルージュの向かい側に位置し、地元住民、近隣就業者、観光客が行き交うという好立地にあります。9か月間の工事を経て2024年1月に全面改装され、約1,300㎡のコンビニエンスストアとして再スタートしました。
地上階には、主に観光客向けにFood-to-Go(即食テイクアウト食品)、サラダバー、ベーカリー、菓子、パリ土産などを配置し、地下階には地域住民が日常的に利用する食品売場を展開しています。
即食商品では、手頃な価格の自社ブランドによるセットメニューに加え、フランス料理、アフリカ料理、インド料理など、多様な食文化を反映した商品を導入しました。地域のベーカリーや菓子店、イル・ド・フランス地域の生産者との連携も強化しています。
また、衣料、ホーム、ビューティーの売場も充実させ、食品スーパーとは異なるモノプリ独自のライフスタイル提案を打ち出しています。
改装時には約100㎡をクイックコマースの商品準備スペースとし、約1,000品目をDeliverooやUber Eatsを通じて30分以内に届ける仕組みも導入しました。店内には有人レジとセルフレジを組み合わせ、商品の位置を案内するデジタル機能やクリック&コレクトにも対応しています。
同店は、歴史ある店舗を保存するだけでなく、即食、地域商品、ライフスタイル、デジタルサービスを組み合わせた都市型店舗の実験拠点と位置付けることができます。
Monoprix Beaugrenelle
更にモノプリが力を入れている即食・テイクアウト(Food to Go)の新コンセプト店舗として注目したいのは、La Cantineと呼ばれるテイクアウトを中心とする店内型飲食コーナーを、2025年4月に設置した15区のMonoprix Beaugrenelleです。
◆住所:19 rue Linois, 75015 Paris
この店舗は1977年開業の老舗店舗の一つですが、2015年に増床・全面改装を経て、2025年4月に即食・テイクアウト需要に対応する新業態La Cantineを導入したものです。
La Cantineでは、バリスタが提供するコーヒー、オリジナルのサンドイッチ、店内調理の温かい料理、菓子などをそろえ、朝食から昼食、午後の軽食まで、時間帯ごとの食事需要に対応しています。一部の商品開発にはパティシエやチーズの専門家も参加しており、早く食べられるだけでなく、品質や楽しさも重視しています。
また、地域の中小事業者の商品を取り入れ、メニューを定期的に更新するなど、地域や立地に応じて柔軟に変更できる仕組みを取り入れました。従来の総菜売場を拡大しただけではなく、フランス版フードコートを店舗内に組み込む発想です。
これは、食品スーパーと外食の境界が薄くなっていることを示しており、都市生活者にとってスーパーは、家庭で調理するための商品を購入する場所であると同時に、その日の食事を完成した状態で購入する場所にもなっています。
フランプリ新業態、食事と生活の拠点へ
カジノ・グループのもう一つの中核ブランドがフランプリです。パリをはじめとする大都市圏に小型店を高密度で展開し、地域住民の日常的な買い物を支えています。
同社が2024年夏から展開している新コンセプトがオクシジェン(Oxygène)です。
2026年2月には、パリ16区のPlace Victor Hugo店が100店舗目のオクシジェン店としてリニューアルオープンしました。
Franprix Victor Hugo
◆住所:127 Av. Victor Hugo. 75016 Paris
約430㎡の同店では、買い物、食事、サービスを3本柱としています。入口付近には即食商品と生鮮食品を配置し、昼食や夕食をすぐに選べる売場構成としました。即食やベーカリー・菓子を中心に品揃えを拡充し、人気のKrispy Kreme(ドーナツ)のコーナーも導入しています。
店舗の外側には、青果専門店を思わせる商品陳列と専用レジを設置しており、小型店でありながら、生鮮食品の鮮度感と専門性を街路に向けて訴求しています。さらに、荷物預かりサービスNannybag、日用品レンタル、鍵の受け渡し、Amazon商品の受け取りなど、食品販売以外のサービスも組み込んでいます。
フランプリは、自らを地域住民にとっての食品庫と冷蔵庫と位置付けており、オクシジェンは、商品を販売するだけの小型スーパーから、食事や日常生活上の用事を一か所で済ませられる地域拠点への転換を目指した新コンセプト店舗として注目されています。
シェア激減でもパリで存在感を放つ理由
全国市場ではわずか3.0%までシェアを縮小したカジノ・グループですが、モノプリとフランプリはパリを中心とする都市部で、現在も高い店舗密度と認知度を持っており、全国シェアの低下が、そのままパリでの存在感の低下を意味するわけではありません。
両社の改革に共通するのは、都市型店舗を食品補充する場所から、食品を選び、生活上の用事を済ませ、短時間でも楽しめる場所へ変えようとしている点です。
一方で、都市型店舗であっても、利便性や体験価値だけでなく、価格への対応を避けることはできません。フランス食品小売市場では、E.ルクレールやアンテルマルシェなど価格競争力を持つ独立小売業者がシェアを伸ばし、リドルやアルディも一定の支持を得ています。
大型店から都市型・近隣型小売へと経営の軸足を移したカジノ・グループの改革は、いまパリの店頭で具体的な形となって現れています。こうした変化は、業態や企業戦略だけでなく、商品の品揃え、価格、売場づくり、即食への対応など、実際の店舗を見ることでより鮮明になります。フランス食品小売の勢力図が変わるなか、各社が消費者の変化にどう向き合っているのか。パリは、これからの都市型小売を考えるうえで注目したい市場です。
ご紹介したパリの小売を、現地で視察しませんか?
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本記事でも取り上げたMonoprix Place Blancheをはじめ、カルフール、ルクレール、ギャラリー・ラファイエットなどを訪問し、フランス小売の最新動向を現地の売場から探ります。
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- 申込締切:2026年11月30日
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