実店舗の客足をモニタリングする調査会社大手のプレイサーai(Placer.ai)社の最新レポートによると、アメリカの食品小売市場では、ここ数年「アジア系スーパーマーケット」が急成長しているということです。
特にカリフォルニア州を中心とした西海岸は、アジア系チェーンにとって最重要市場となり、出店が加速しています。
実際に、アメリカ市場におけるアジア食材の売上の伸び率は、2023年~24年期において全体のグロサリー売上に比べて約4倍のスピードで成長しており、アジア食材市場規模も2024年時点の約372億ドルから2031年には約513億ドルになるという予測を市場調査会社大手のパーシステンス・マーケット・リサーチ(Persistence Market Research)社が報告しています。
急成長の背景にあるものは?
同社による別のレポートでも、アメリカ西部におけるアジア食材市場は全体の約32%を占めており、移民・アジア系人口が集中している地域的な強みがあるということですが、この急成長の背景にある要素として前述のPlacer.ai社は以下の4つの点を挙げています。
- アジア系人口の多さ。ベイエリアは住民の約33%がアジア系で、ロサンゼルスのオレンジ郡は全米の3倍強のアジア系住民が住んでいる。
- 健康志向・多文化食ニーズが高まり、アジア食材との相性が良い、Z世代・ミレニアル層がけん引し、ラーメン、寿司、キムチ、カレー等のニーズが 爆発的に伸びている。
- 高所得者層が多く、鮮魚・寿司など高単価商品ニーズが高まっている。特にシリコンバレーを中心に超高所得者層が多く住んでいる。
- 大型空き店舗が多く出店しやすい。旧Kmart、Sears等の店舗跡地が多く存在し、大型スーパーの進出を後押ししている。
また、アジア系店舗は約3,000㎡~5,000㎡と大型店が中心で、アメリカの一般的店舗よりも一回り大きい傾向があり、さらに総菜・生鮮・輸入食材とフードコートの複合フォーマットが多いのも特徴です。
アジア系スーパー4企業とその特徴
次に代表的なアジア系スーパーチェーン4企業をその特徴と共にご紹介します。
| 店舗名 | 店舗サイズ | 特徴 |
|---|---|---|
| T&T Supermarket | 3,000㎡~7,000㎡ | 台湾系移民が創業した‘カナダ発’アジア系スーパーチェーンで、1993年にバンクーバーで創業された。 現在カナダ最大の小売グループのLoblaw Companiesの傘下となっている。 生鮮食品、中華、日本、韓国など多国籍アジア食品を取り扱い、店内ベーカリーやフードホールも併設している。 特に巨大鮮魚コーナーの活魚・ライブ水槽は有名で、フードコートと併せて食のテーマパークとも呼ばれている。 現在(2025/11)カナダ国内で30店舗を展開しているが、2026年春に、カリフォルニア州サンノゼのWestgate CenterのWalmart跡地に約5,110㎡の店舗のオープンを皮切りに、2026年冬にサンフランシスコ、2027年にカリフォルニア州アーバインに出店を予定している。 |
| 99 Ranch Market | 2,500㎡~4,000㎡ | 1984年にカリフォルニア州ウェストミンスターに台湾系移民が創業した西海岸最大のアジア系スーパーチェーン。 フードコート(台湾・中華・ベトナム等)を併設している。 中華系食品、台湾系総菜、ベトナム・日本食品も強化しており、水槽付き鮮魚コーナーではライブ調理も見られ、ローストダック専門売り場もある。 2025/11現在63店舗を展開しており、その内42店舗がカリフォルニア州である。 |
| H Mart | 2,800㎡~5,100㎡ | 1982年にニュージャージー州で創業した韓国系スーパーチェーンで、西海岸ではロサンゼルスのアーバイン、フラートン、ガーデングローブ、サンフランシスコのベイエリアなどで急成長している。 比較的若年層を中心に来店率が高い。Kカルチャーの世界的ブームの元Kポップや映像を店舗内で流す演出が有名。 フードコートに冷麺、スンドゥブ、ビビンバ等本格店舗を導入しており、韓国総菜や韓国コスメも人気となっている。 2025/11現在85店舗を展開しており、その内18店舗がカリフォルニア州である。 |
| Mitsuwa Marketplace | 2,800㎡~3,700㎡ | 元のヤオハンUSAから1998年にブランドを構築した日系のスーパーで、カリフォルニア州トーランスを拠点とする。 ロサンゼルスのトーランス、コスタメサ、アーバインの他、サンディエゴやサンノゼを中心に現在13店舗を展開しており、7店舗がカリフォルニア州にある。日本食材・和惣菜の他にラーメン店を併設している店舗もある。 和食の体験型スーパーで、他にも日本のお菓子、調味料、冷凍食品の品揃えが圧倒的である。 |
他にもサンフランシスコ郊外のフレモント(Fremont)で人気の日系スーパーのOsaka Marketplaceが、2025年12月にフォスターシティ(Foster City)、2026年11月にプレザント・ヒル(Pleasant Hill)に新店舗をオープンすると発表し、地元誌のサン・フランシスコ・クロニクル(San Francisco Chronicle)等で取り上げられました。
もともと多文化都市であるサンフランシスコ地区のベイエリアで高品質な日本食材、総菜、ベーカリー、スイーツ等で人気の店舗でしたが、新たな3,200~3,900㎡の食の体験型店舗の追加ということで、地元のアジア系住民のみならず、和食ファンの一般消費者からも注目を浴びているということです。
アメリカ西海岸では、今後もアジア系・日系スーパーマーケットの進化が続きそうです。
引き続き現地の最新動向や注目店舗の情報を継続して発信していきたいと思います。