
アメリカを代表する週刊誌『ニュースウィーク(Newsweek)』は、ドイツの統計会社Statistaと共同で実施した最新調査をもとに、「2025年 アメリカで最も信頼できる企業(Most Trustworthy Companies in America 2025)」を発表しました。
今回は、食品およびコンビニエンスストア分野の上位企業に注目し、その信頼の背景にある要因や今後注目の企業について詳しく解説します。
信頼度の分析
「信頼」は、企業にとって最も重要で価値ある無形資産のひとつです。しかし、その信頼性を客観的に数値化することは依然として困難です。
世界的コンサルティング企業PwCの調査では、経営者の約90%が「自社は顧客から信頼されている」と考えている一方で、実際にその企業を信頼できると感じている消費者はわずか30%程度にとどまっており、信頼に対する認識には大きなギャップがあることが報告されています。
このような背景を受け、ニューズウィーク誌とスタティスタ社は共同で、「アメリカで最も信頼できる食品小売企業ランキング」を実施しています。
アメリカで最も信頼できる食品小売企業ランキング2025
この調査では、航空、医療、小売、消費財など23業界、約3,400社を対象に行われ、アメリカ全土の2.5万人から10万件を超える評価データを収集し、以下の3つの視点が分析の中で重視されています。
- 消費者からの評価(サービス品質・顧客対応・ブランドイメージなど)
- 従業員からの評価(職場環境・働きがい・企業文化など)
- 投資家からのの評価(経営の安定性・透明性・社会的責任など)
評価の対象となった企業は、アメリカに本社を置く年商5億ドル以上の23業界の企業で、そのうち上場企業が約1,900社、非上場企業が約1,500社という構成となっており、その中から上位700社が選出されています。今回はそのうち、食品小売およびコンビニエンスストア部門のトップ10企業、および注目すべき11位以下の企業についてご紹介します。
なお、この調査は顧客(40%)、投資家(40%)、同業界の従業員(20%)の評価に基づいており、企業の信頼性に影響するような不祥事や訴訟問題を抱える企業は、あらかじめ除外対象となっています。
食品小売・コンビニエンスストア部門トップ10
ランキング | 企業名 | 特徴 |
---|---|---|
1 | ウィンコ・フーズ(WinCo Foods) | 低価格・セルフサービス型 |
2 | パブリクス(Publix) | 顧客ロイヤルティ |
3 | ホールフーズ(Whole Foods Market) | オーガニック志向 |
4 | エイチ・イー・バット(H-E-B) | テキサス州地域密着 |
5 | クローガー(Kroger) | 全米最大手チェーン |
6 | クイックトリップ(Quik Trip) | ガソリン併設型コンビニ |
7 | フレッシュ・マーケット(The Fresh Market) | 欧州風・高級志向 |
8 | ビッグ・ワイ・フーズ(Big Y Foods) | 家族経営・地域密着 |
9 | アルバートソンズ(Albertsons Companies) | 多数ブランドチェーン |
10 | スプラウツ・ファーマーズ・マーケット(Sprouts Farmers Market) | ナチュラル志向・低価格 |
11位以下の主要企業
ランキング | 企業名 | 特徴 |
---|---|---|
11 | グロサリー・アウトレット(Grocery Outlet) | ディープディスカウンター |
14 | ウェグマンズ(Wegmans) | 顧客・従業員満足度 |
16 | ハリス・ティーター(Harris Teeter) | 高品質生鮮食品・地域密着 |
18 | ウェイクファーン(Wakefern) | 食品小売り協同組合 |
19 | ハイヴィー(Hy-Vee) | 多機能型SMチェーン |
21 | フード・ライオン(Food Lion) | 地域密着・低価格 |
23 | ボンズ(Vons) | 高級志向 |
28 | ジャイアント・イーグル(Giant Eagle) | 地域密着・大型店舗 |
30 | ストップ&ショップ(Stop & Shop) | 地域密着・老舗チェーン |
トレンドと特徴
今回の調査結果からは、信頼される食品小売企業の共通点として、次の3つのトレンドが明らかになりました。
① プライベート企業の強さが際立つ
地域密着型で、従業員重視型の非上場企業が高評価を獲得しています。ウィンコ・フーズ、パブリクス、H-E-Bといったチェーンが、地元との信頼関係を高く評価されています。
② 大手全国チェーンの「安定感」
クローガー、アルバートソンズ、スプラウツ・ファーマーズ・マーケットなどの大手上場企業も上位にランクインしています。全米展開のスケールメリットを活かしつつ、品質・価格・サービスのバランスを高水準で両立している点が挙げられます。
③ オーガニック・ナチュラル志向の躍進
ホールフーズ、フレッシュ・マーケット、スプラウツ・ファーマーズ・マーケットなど、健康志向・サステナブル志向のチェーンが消費者から高い支持を得ています。
今後注目の企業は?
今回1位に輝いたのは、ウィンコ・フーズ(Winco Foods)です。1967年にアイダホ州ボイシで創業された同社は、従業員所有型の非上場スーパーマーケットチェーンとして、現在では西海岸を中心に10州・142店舗を展開しており、従業員数は約20,000人にのぼります。(※2025年7月15日時点)
最大の特徴として、倉庫型店舗にセルフバッグ方式を導入しており、仕入についても中間業者を通さず直接仕入れをすることで低価格を実現しています。従業員がオーナーということで、顧客との距離も近く、さらにセルフレジを廃止し顧客との接点を高める等、顧客満足度も非常に高い企業といわれています。また、ニューヨーク・ポスト(New York Post)による「2025年最安スーパーランキング」で、「メンバーシップ不要で倉庫価格を提供する」ことで、コストコよりも商品を安く買うことができ、今後価格面でもリドル(Lidl)に次ぐ注目企業として紹介されています。
アメリカのリテールコンサルティング企業のマーケットフォース(Market Force)社による最新の調査でも、コスト重視の消費者の87%が価格面でウィンコ・フーズを選ぶと回答するなど、注目の高さがうかがえます。当サイトでも今後も注目して行きたいと思います。