全世界で様々な分野における顧客満足度を調査しているJ.D.パワー(J.D.Power)社が毎年実施している「アメリカの調剤薬局の顧客満足度」についての最新の調査結果を発表しているのでご紹介します。
2019年の5月から6月にかけて集計した調査結果で今回で11回目となります。
直近の3か月間に処方薬を購入または再購入した顧客12,059人を対象に、それぞれが利用した店舗における以下のサービス内容についての満足度を1,000点満点で評価してもらったものです。
@ 処方薬購入(再購入)のシステム
A 処方薬の値段
B 薬剤師の対応
C 薬剤師以外のスタッフの対応
D 処方薬の受け取りシステム
E 処方薬のデリバリーサービス
調査対象はスーパーマーケット系ファーマシー、ドラッグストア、量販店系ファーマシーおよび通信販売専門店の4つの業態で個別にランキングしておりますが、結果としてスーパーマーケット系のファーマシーが平均871ポイントと最も高い評価を受けているという結果になりました。 以下が業態別のランキングと獲得ポイントです。
◎スーパーマーケットチェーン(平均ポイント 871) |
総合順位 |
||
順位 |
店舗名 |
ポイント |
|
1 |
915 |
1👑 |
|
2 |
897 |
4 |
|
3 |
ウィン・ディキシー(Winn-Dixie) |
896 |
5 |
4 |
エイチ・イー・バット(H-E-B) |
894 |
6 |
5 |
ショップライト(Shoprite) |
886 |
9 |
◎ドラッグストアチェーン(平均ポイント 842) |
総合順位 |
||
順位 |
店舗名 |
ポイント |
|
1 |
グッド・ネイバー・ファーマシー(Good Neighbor Pharmacy) |
914 |
2 |
2 |
ヘルス・マート(Health Mart) |
893 |
7 |
3 |
ライトエイド・ファーマシー(Rite Aid Pharmacy) |
865 |
|
4 |
ウォルグリーン(Walgreens) |
840 |
|
5 |
CVSファーマシー(CVS Pharmacy) |
834 |
|
◎量販店(平均ポイント 853) |
総合順位 |
||
順位 |
店舗名 |
ポイント |
|
1 |
サムズ・クラブ(Sam's Club) |
890 |
8 |
2 |
879 |
|
|
3 |
869 |
|
|
4 |
837 |
|
|
** |
** |
** |
|
◎通販専門店(平均ポイント 867) |
総合順位 |
||
順位 |
店舗名 |
ポイント |
|
1 |
ヒューマナ・ファーマシー(Humana Pharmacy) |
900 |
3 |
2 |
カイザー・パーマネント・ファーマシー(Kaiser Permanente) |
886 |
9 |
3 |
オプタムRx(Optum RX) |
869 |
|
4 |
CVSケアマーク(CVS/Caremark) |
864 |
|
4 |
エクスプレス・スクリプツ(Express Scripts) |
864 |
|
※J.D.Power社調査
スーパーマーケット系ファーマシーは全ての企業が総合ランキングでも10位以内になっており、顧客から高い評価を得ていることが分かります。
アメリカは世界的にその高額な医療費で知られており、国民の多くはちょっとした体調不良や病気では病院には行かず医者と同等の医療知識と権限を持つ薬剤師に相談するという社会的背景があります。
2014年にオバマ前大統領が国民皆保険制度である医療保険制度改革法(オバマケア)をスタートしましたが、医療費および保険料が高すぎるため、いまだに保険未加入者が多いのが実情です。
このような環境下で、ドラッグストアに加えて食品を中心に取り扱っていたスーパーマーケットチェーンも専属の薬剤師を雇用し、病院よりも安く、基本的な医療サービスを受けることが可能な簡易クリニックを店舗内に開設し、年中無休・24時間等の体制で続々とファーマシー市場に参入をしています。
アメリカの薬剤師は処方権の他に、予防接種や血液検査などの基本的医療行為の権限を持っているため、病院に行かなくても近所のスーパーマーケットで医療サービスを受けることができ、処方薬も購入可能ということで今後もこの市場でのスーパーマーケットの存在感は高まるものと予測されています。
その中でも全ての業態を通じてトップ評価を獲得したウェグマンズは、様々な企業ランキングにおいて常に高い評価を得ていることで知られており、最近の例としては以下のような評価を得ています。
・マーケット・フォース社 〜 「米国人気スーパーマーケットランキング2019」3年連続1位
・ハリス・ポール社 〜 「最も評判の良いスーパーマーケット2019」1位
・フォーチュン誌 〜 「働き甲斐のある企業ランキング2019」3位(22年連続ランクイン)
このように顧客からも従業員からも大人気のスーパーマーケットチェーンのウェグマンズですが、処方薬の分野でも今回2年連続で最も顧客満足度が高い企業として選ばれたわけです。
ちなみにウェグマンズの過去5年間の同調査での結果は以下の通りでした。
年度 |
総合順位 |
ポイント |
2015年 |
1 |
887 |
2016年 |
5 |
891 |
2017年 |
4 |
890 |
2018年 |
1 |
906 |
2019年 |
1 |
915 |
常に上位にランクインしておりますが、特に直近の2年でファーマシー部門の強化をしたことが顧客満足度のポイント数の伸びからも明白です。
その背景には2018年7月に、アマゾンがオンライン薬局のスタートアップ企業のピルパック(PillPack)社を買収し、約1,000億ドルといわれるオンライン薬局市場に本格的に参入を開始したことがあると考えられています。
ウェグマンズは、店舗のみならずオンラインでの処方薬や医療サービスの充実化に力を入れており、メンバー登録すると家族にも同等のサービスを受けることが可能となり、無料で全米各地への処方薬の配送などを提供しています。
ウェグマンズは、1916年にニューヨークのロチェスターで創業した家族経営のチェーンで、現在東海岸エリア6州で99店舗を展開していますが、今年の5月のメールマガジン「米国小売超激戦区の最新情報」でもご紹介した通り、9月29日にノースカロライナ洲のローリー(Raleigh)に初出店を予定しておりこれが同社の100店舗目となります。
また、10月28日にはニューヨーク市内で初の店舗をブルックリン(Brooklyn)のネイビーヤードにオープンする予定となっています。
高品質なサービスとデリ、ベーカリー、生鮮食品をはじめとする圧倒的な食の提案力で支持を得てきましたが、新たに医薬分野でも全米トップの顧客満足度を獲得したウェグマンズは今後も注目をして行きたいと思います。
(2019.09.17配信)
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