昨年はニ度にわたり英国小売市場の情報をご紹介いたしましたが、今回は前回9月から約半年ぶりの英国最新小売業情報をお伝えします。英国の小売業は地形的・歴史的に米国に比べ、より日本の小売業に近いと言われており、注目すべき市場です。
まず、食品スーパーのマーケットシェアの最新情報をご紹介します。以下の表は、英国の市場調査会社である「カンター・ワールドパネル(Kantar Worldpanel)社」が、2018年2月25日までの12週間の数値を集計した最新の市場シェアランキングです。
※2018年2月25日時点市場シェア(Kantar Worldpanel社データ)
順位 |
小売企業名 |
2/25シェア |
1年前 |
前回対比 |
売上 |
|
2/25 |
1年前 |
|||||
1 |
1 |
テスコ(Tesco) |
27.90% |
28.00% |
▼0.10% |
2.70% |
2 |
2 |
セインズベリーズ(Sainsbury's) |
16.20% |
16.50% |
▼0.30% |
1.10% |
3 |
3 |
アズダ(Asda) |
15.60% |
15.70% |
▼0.10% |
2.30% |
4 |
4 |
モリソンズ(Morrisons) |
10.60% |
10.60% |
0.00% |
2.70% |
5 |
5 |
アルディ(Aldi) |
7.00% |
6.40% |
0.40% |
13.90% |
6 |
6 |
コープ(Co-op) |
5.80% |
6.00% |
▼0.20% |
0.40% |
7 |
7 |
ウェイトローズ(Waitorose) |
5.20% |
5.30% |
▼0.10% |
2.30% |
8 |
8 |
リドル(Lidl) |
5.10% |
4.60% |
0.50% |
13.30% |
全体を見ると、いわゆるビッグ4と呼ばれる上位4社のうち、3社が1年前よりもシェアを落としており、ドイツ発の2大ディスカウントチェーンのアルディとリドルが相変わらずシェアを伸ばしていることがわかります。このような構図はここ数年変わっていませんが、英国内におけるこの期間の食品小売の売上高は、前年同期比で3.2%伸びており、シェアを落している企業でも売上高を伸ばしています。
また、この12週間をベースにした売上高を見ていくと、英国の食品小売りは今回まで12期連続で対前年同期比3%以上の堅調な伸びを続けています。
前回対比(半年前の昨年8月)のシェアを基準に見てみると、アルディはほぼ変動が無く、リドルはシェアを落し、順位もウェイトローズと入れ替わっていますが、トップ4は軒並みシェアを回復しています。市場の寡占化が特徴と言われる英国の食品小売ですが、トップ4の全体におけるシェアが、昨年8月の調査の時点で初めて70%を割り、5年前の76.3%から69.3%まで落ちたものが、今回はわずかではありますが70.3%に回復しました。
※この半年間のシェア変動
テスコ(Tesco) |
↑0.1% |
ビッグ4シェア:70.3% |
セインズベリーズ(Sainsbury's) |
↑0.4% |
|
アズダ(Asda) |
↑0.3% |
|
モリソンズ(Morrisons) |
↑0.2% |
|
アルディ(Aldi) |
0.00% |
アルディ&リドルシェア:12.1% |
リドル(Lidl) |
▼0.10% |
この半年間だけを見ると、ビッグ4を中心とした英国企業によるアルディとリドルへの対抗策が、徐々に結果を出し始めたことで、それまで20%近い伸びを続けていたアルディとリドルの伸び率にわずかながら影響を及ぼしていると考えられます。
前回9月の英国特集のメールマガジンに記載したテスコによる食品卸大手のブッカー(Booker)社の買収について、ブッカー社の投資家を中心とした反対運動により一時暗礁に乗り上げておりましたが、先日正式に規制当局による承認を得ることが出来ました。英国の高級紙タイムズ(Times)の日曜版であるサンデータイムズ(The Sunday Times)誌によると、テスコはアルディとリドルへの対抗策として、このブッカー社の買収による仕入力強化により、全く新しいディスカウントチェーンの設立を考えているということです。
現時点でこの新しい店舗の名称やオープン時期をはじめとした詳細は発表されておりませんが、長年に渡り英国の食品小売市場をけん引してきたテスコの新たな取り組みからも目を離せません。
(2018.3.12配信)
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