アメリカやヨーロッパをはじめとする海外視察や海外出張では、現地のインターネット環境が移動や調査の質に大きく影響します。近年は、従来から利用されてきたレンタルWi-Fiルーター(以下、ポケットWi-Fi)加え、スマートフォンのeSIMを使った海外データ通信サービスが急速に広がっています。
今回は、特に海外視察・アメリカ出張のケースを念頭に、ポケットWi-FiとeSIMの特徴を整理し、利用シーン別の選び方をご説明したいと思います。
海外のインターネット通信でよく利用される手段
海外で利用される主なインターネット通信手段としては、次のような選択肢があります。
- 日本で事前レンタルするポケットWi-Fi
- 海外用のeSIM(オンライン購入のデータ専用プランなど)
- 現地空港などで購入するプリペイドSIM
- 宿泊ホテルやカフェなどのWi-Fiスポットを利用
このうち、事前に日本から準備しやすい手段として、ポケットWi-FiとeSIMが代表的な選択肢になっています。
ポケットWi-FiとeSIMの比較
ポケットWi-FiとeSIMそれぞれのメリット、デメリットを比較表にまとめております。まず、こちらの表で特徴をつかんでいただき、海外視察・海外出張のスタイルに合わせて選択するための検討材料にしていただければと思います。
レンタルポケットWiFiとeSIMの特徴一覧
| レンタルポケットWiFi | eSIM | |
|---|---|---|
| 利用料金(短期) | 1日/1,000円~2,000円(方面による) | 1GB/700円~ |
| 通信速度・安定性 | 国・プランによって異なる | 現地キャリア使用 (5G/4G) |
| 受取/返却 | 空港等で必要 | オンライン完結 |
| 荷物の増加 | あり | なし |
| 紛失リスク | あり(補償加入プランあり) | なし |
| 充電の手間 | 必要 | 不要 |
| 対応機種 | 全スマホ対応 | 対応機種限定 |
| SIMロック | SIMロックでも使用可能 | SIMフリー限定 |
| 同時接続端末数 | 複数台/複数人で可能 | テザリング可能 |
| 設定のしやすさ | 電源ON/PW接続のみ | 2次元コードスキャン/設定要(1-2分) 慣れていないとそれ以上かかる場合も |
| 向いている人 | eSIM非対応スマホ所持/ シェア使用/簡単な使用方法 | スマホ1台完結/低料金/軽装 |
ポケットWi-Fi(レンタルWi-Fi)の特徴
ポケットWi-Fiのメリット
ポケットWi-Fiの大きなメリットは、複数の端末をまとめて接続できることです。1台のルーターでスマートフォン、タブレット、ノートPCなど、最大5~10台ほどの機器を同時に接続できる機種が一般的で、同僚や出張チームなど複数人での利用と相性が良いと言えます。
また、スマートフォン側のSIMの差し替えやAPN設定と呼ばれる通信設定を変更しなくてよい点も特徴です。オフィスや家庭のWi-Fi接続と同様に、本体の電源を入れてSSIDとパスワードを入力するだけで利用が始められるため、通信設定に詳しくない利用者でも導入しやすい方式です。普段利用している携帯回線を変更しないで済むことも安心材料になります。
日本国内の空港内に受取・返却カウンターを設けている事業者もあり、その場合は事前に端末を受け取ったり、宅配便で返却したりする手間をかけずに、出発時と帰国時にまとめて手続きを完了できます。
ポケットWi-Fiの料金イメージ
ポケットWi-Fiは、日額課金+データ容量の上限という料金体系が一般的です。具体的には、1日あたり500MB〜1GB程度の定額プラン・1日◯GB、あるいは「1日あたり◯GB相当の“無制限”」といったプランなどが設定されているケースが多く見られます。
同じ地域・同じデータ量で比較すると、eSIMよりやや高めの価格帯になることが多い一方、1台を複数人でシェアする前提で考えると、1人あたりの実質単価は抑えられる場合があります。
料金の一例
<1日=1GB>
・アジア: 約1,000円
・欧米 : 約1,500円
<無制限タイプ>
・東南アジア:1,800円~2,100円/日
・欧米 :2,100円~2,300円/日
・アジア周遊:約2,400円/日
・ヨーロッパ周遊:2,451円/日
ポケットWi-Fiのデメリット・リスク
一方で、ポケットWi-Fiには、次のような注意点もあります。
- Wi-Fiルーター本体と充電器が追加されるため、荷物が増える
- バッテリー持続時間はおおむね8〜10時間程度で、1日行動する場合はモバイルバッテリー併用が前提になりやすい
- ルーターを紛失した場合、弁済金の負担が発生するリスクがある
- 渡航前に受け取り手続きが必要で、帰国後には返却が必須となる
- 在庫状況によっては直前申込みが難しいケースもある
荷物の総量や移動時間、空港での滞在時間などを含めて、利用のしやすさを考える必要があります。
海外用eSIMの特徴
eSIMは、対応スマートフォンに通信プロファイルをダウンロードして使う方式です。物理SIMカードの抜き差しが不要で、オンライン上で購入から設定まで完結できる点が特徴です。
2025年9月に発売されたiPhone 17シリーズでは、物理SIMカードが廃止され、eSIMのみ対応となるなど国内での利用も主流となりつつあります。
eSIMのメリット
海外視察・出張時のeSIM利用は、次のようなメリットがあります。
- 渡航前に日本から購入と設定を済ませ、現地到着直後から通信をすぐに利用できる
- 物理SIMカードを扱わないため、SIM紛失や差し替えによるトラブルが発生しにくい
- アメリカ単国プランに加え、「北米周遊」「アジア周遊」など複数国をまたぐ視察にも対応しやすい
- ポケットWi-Fiのようなルーターを持たないため、荷物を増やさずに済む
視察中に一人で動く時間が長い担当者や、乗り継ぎの多い長距離出張との相性が良い方式です。
eSIMの料金イメージ
eSIMは、短期・少容量であればポケットWi-Fiより割安になることが多いです。7〜10日間有効・数GBのデータプラン・30日間有効・一定容量または使い放題プランなどが提供されており、「アメリカ出張 1週間」「アメリカ+メキシコ視察」のような具体的な日程に合わせて選びやすくなっています。
ホテルや展示会場、カフェのWi-Fiをうまく併用する前提であれば、外出中の地図・チャット・調査用に最低限のeSIMデータを数GB用意するだけで足りるケースも少なくありません。
料金の一例
<1GB/7日間>
・アジア・欧米:約700円
・周遊アジア・ヨーロッパ:約800円
<無制限タイプ>
・東南アジア : 5日間 約3,500円 ※東アジア含む
・欧米 : 5日間 約3,500円
・アジア周遊 : 5日間 約5,600円
・ヨーロッパ周遊:10日間 約6,200円
eSIMの注意点・リスク
eSIMを利用する際には、次のような点に注意が必要です。
- 基本的に1つのeSIMプランは1台の端末専用で、ポケットWi-Fiのように複数人で共有することは想定されていない(テザリングを利用することでシェアは可能だが通信速度が低下する可能性がある)
- eSIM対応機種に限られるため、事前に利用端末が対応しているかどうかの確認が必須。
- 社用スマホなどの貸与機器では、MDM (Mobile Device Management) ツールがインストールされており、セキュリティがかかっていることがある。MDMツールは、アプリのインストール制限だけでなく、Wi-Fi接続、カメラ利用、eSIMプロファイルの追加や変更といった、端末の基本的な機能を制御するものである
- プロファイルのダウンロードや回線の切り替え設定に一定の慣れが必要で、設定を誤ると現地で通信できないリスクがある
- 通信トラブルが発生した場合、サポートが英語のチャットやメールのみ、というサービスも一部あり、現地でのリカバリーに時間がかかる可能性がある
特に、視察などの到着日初日にeSIMの設定がうまくいかないと、その日の行程全体に影響します。利用するサービスの設定マニュアルのわかりやすさや、日本語サポートの有無も事前に確認しておくと安心です。
eSIMに対応しているモバイル端末
eSIMに対応している端末は、目安として2018年以降に発売されたiPhoneやGoogle Pixelなどの中〜上位モデルが中心となります。iPhoneであればiPhone XS / XR以降、Google PixelはPixel 3以降がeSIM対応です。
一方でAndroid端末は機種ごとの差が大きいため、eSIMを利用する際は、事前に各端末の仕様やキャリアの案内ページで対応可否を確認しておくことが重要です。
参考:eSIM について – Apple サポート (日本)
参考:Google Pixel スマホ eSIM・デュアル SIM の設定方法
海外視察・出張での組み合わせパターン
以下は、海外視察や米国アメリカなどの海外出張にフォーカスした、ポケットWi-Fi・eSIMの活用例をご紹介します。
グループ視察の場合(ポケットWi-Fi)
海外コンビニやスーパーマーケットの視察ツアーなど、2〜4名程度の少人数チームでの視察では、次のような組み合わせが考えられます。
- 基本回線:ポケットWi-Fi 1台をチームで共有
- 役割:リーダーまたは担当者1名がルーターとモバイルバッテリーを管理
- 補完策:ホテルや会場のWi-Fiを活用し、大容量データの送受信は室内で実施
上記はあくまでも一例ですが、全員が同じ行程で行動する視察であればコスト効率が良く、設定も比較的シンプルとなります。
個人行動が多い出張(eSIM)
展示会視察と同時に、別の都市での店舗調査や社内訪問を組み合わせるなど、途中で行動が分かれるスケジュールでは、各人がeSIMを利用するパターンも有効です。
- 各自のスマートフォンに海外eSIMを設定し、移動・連絡・調査のベースとして利用
- ルーターの受け取り・返却が不要で、空港到着後すぐに移動開始できる
- 大容量データやオンライン会議が多い担当者のみ、別途ポケットWi-Fiを追加する
ポケットWi-Fiを「チームの共通通信基盤」とみなすのではなく、大容量通信が必要な担当者向けの“追加ライン”として使う構成も、今後は選択肢になってくるのではないかと考えます。
まとめ:海外視察・海外出張に合ったネット通信の選び方
海外視察や海外出張では、現地でのネット環境をどう確保するかが、視察・調査、業務の質にも直結します。
最終的な選択は、利用人数と接続したい端末の数、渡航日数や訪問国数、想定するデータ利用量、そして料金と手間のどちらを重視するかという複数の条件の組み合わせで決まります。ポケットWi-Fiをチームの共通インフラとして用意しつつ、同行メンバーの一部はeSIMでバックアップ回線を持つといった「組み合わせ」も、海外視察ならではの現実的な選択肢です。また、今回まとめたポケットWi-FiとeSIMの違いのほか、訪問先において都市部だけでなく郊外や地方都市に出向く際(移動時)は、どちらの利用が適しているか事前に調べることも重要かもしれません。
ポケットWi-FiかeSIMのどちらかを選択した後は、「プラン」や「サポートサービス」など、各会社の提供サービス詳細も把握できれば、渡航者それぞれに適した通信利用につながると思います。慣れていれば価格重視、初めてであればサポート内容を重視することで、万が一ネットが繋がらなかった時に問い合わせができるかを確認しておくと安心です。
今回ご紹介した特徴と注意点を踏まえ、自社の海外視察・海外出張のスタイルに合わせて、ポケットWi-FiとeSIMの選択・バランスの検討材料にしていただければと思います。
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