
当サイトでも多く取り上げる「グロサリー」の区分ですが、日常的に小売・流通に関わっていないとあまり目にしない言葉かもしれません。
日本では日常的に使われない言葉ですが、アメリカの小売・流通業界ではごく当たり前に使われています。「グロサリー」という概念を理解することは、アメリカの流通ビジネスを読み解く上で非常に重要といえます。
今回は、グロサリーの基本的な意味から、米国小売市場における位置づけ、さらにオンライングロサリーの最新動向までを整理してご紹介しようと思います。
グロサリーの定義

「グロサリー(grocery)」は、食品や日用品を指す言葉で、パンや牛乳、肉、野菜といった生鮮食品だけでなく、洗剤やトイレットペーパーといった日常生活に欠かせない必需品も含まれます。また、グロサリーは商品そのものを意味するだけでなく、それを販売するグロサリーストア(食料品店)を指す場合もあります。
もともとの語源はフランス語の「Grossier(卸商人)」で、英語に取り入れられた後、食品を扱う商売や店舗の意味に広がっていきました。現代のアメリカでは「I’m going to the grocery store.」といえば、「スーパーへ買い物に行く」という日常的な表現になります。
商品カテゴリーの具体例
グロサリーに含まれる商品は非常に幅広く、以下のように分類できます。
- 乾物類:米、パスタ、シリアル、缶詰、調味料
- 生鮮食品:野菜、果物、肉、魚、乳製品
- 冷凍食品:冷凍野菜、冷凍ピザ、アイスクリーム
- 飲料:水、ジュース、炭酸飲料、コーヒー、アルコール類(州法による)
- 日用品:トイレットペーパー、洗剤、ペーパータオル、歯磨き粉
米国におけるグロサリー店舗の役割
アメリカでは、グロサリーストア(Grocery Store)は生活の基盤として地域に浸透しています。KrogerやSafewayのような大型スーパーマーケット、WalmartやTargetなどのディスカウント型店舗、Whole FoodsやTrader Joe’sといった高級志向チェーン、さらには地元密着の小規模店舗まで、非常に多彩な形態があります。また、小売業全体に占めるグロサリー売上は実におよそ50%にも及び、経済的にも流通業界的にも欠かせない存在です。
代表的なグロサリーストア
Walmart(ウォルマート)
Walmart(ウォルマート)は米国最大のグロサリーストアチェーンであり、アメリカ小売市場全体でも圧倒的なシェアを持っています。低価格戦略を強みに、郊外型の大型店舗から都市部の小型店まで幅広く展開しています。食品、日用品、家電まで揃う「ワンストップショッピング」を可能にしており、オンライン食料品販売においても店舗網を活かしたピックアップ・宅配サービスでシェアを拡大しています。
Kroger(クローガー)
Kroger(クローガー)はアメリカを代表する伝統的なスーパーマーケット型グロサリーチェーンです。プライベートブランド(PB)の商品開発に力を入れており、品質と価格のバランスが高く評価されています。さらに、ロボティクス倉庫やAIを活用した在庫管理により、オンライン注文と実店舗販売の融合を進めています。
Whole Foods Market(ホールフーズ・マーケット)
Whole Foods Market(ホールフーズ・マーケット)はオーガニック食品や自然派商品に特化したグロサリーストアです。健康志向の高い消費者や高所得層に強く支持されており、2017年にAmazonが買収してからは、Amazon Freshとの連携によりオンライン食料品市場でも存在感を高めています。
Trader Joe’s(トレーダー・ジョーズ)
Trader Joe’s(トレーダー・ジョーズ)は、独自性の高い商品とリーズナブルな価格で人気の都市型グロサリーストアです。オリジナル商品やエスニック食品が豊富で、ミレニアル世代や都市部の消費者を中心に支持を集めています。SNS映えする商品やユニークなパッケージ戦略も強みで、アメリカ小売市場において独自のポジションを築いています。
グロサリーストアとスーパーマーケットの違い
混同されがちですが、「グロサリーストア」と「スーパーマーケット」は若干意味合いが異なります。一般的にはスーパーマーケットの方がより広い品揃えや大型店舗を指しますが、日常的にはグロサリーストアでどちらも表現可能です。
つまり、「グロサリー」は店舗形態ではなく、“食品・日用品を買う場所全般”を指す言葉として機能しています。消費者目線では大きな違いはありませんが、流通業界の分析では「カテゴリーの区分」として区別されることもあります。
グロサリーストア:食品や日用品を中心に扱う店舗全般
スーパーマーケット:より大型で品揃えが幅広い小売店
流通業界における位置づけ
グロサリーは流通業界にとって「安定した需要」を生む重要分野です。特に食品は賞味期限や鮮度管理が必要なため、物流・在庫管理の効率化が常に求められ、米国流通業の競争力を左右する大きな要素になっています。
企業が注力している領域は次のような項目が挙げられます。
- 冷蔵・冷凍物流インフラの強化
- データ活用による在庫最適化
- 地域配送網の効率化
拡大を続けるオンライングロサリー市場

近年、急成長しているのがインターネットを活用したオンライングロサリーです。スマホアプリやECサイトからの注文、宅配・ピックアップサービスの普及により、市場規模は年々拡大しています。
直近の傾向
- 米国オンライン食料品市場は2025年に3,277億ドル、2026年には3,638億ドルに成長見込み(年平均12.3%成長)。
- Walmartがシェア29.0%、Amazonが22.0%、Krogerが9.9%、Targetが4.5%を占有。
- 2029年にはグロサリー売上の約17%がオンライン化すると予測。
以上の成長は、利便性志向の高まりと物流インフラの高度化によって後押しされています。
主要プレイヤーの事例紹介
米国のグロサリーストアは、アメリカ小売業界の中心として生活必需品を提供するとともに、オンライン食料品市場の拡大にも大きく貢献しています。ここでは、代表的な企業とその特徴をご紹介します。
Walmart
Walmartは、オンライン食料品市場でもシェア1位を誇り、店舗網を活かした「注文→店舗ピックアップ」や「当日配送」モデルに対応しています。郊外型の大型店舗から都市部の小型店まで幅広く展開しており、日用品や食品、衣料、家電などをまとめて購入できる「ワンストップショッピング」を実現しています。
Amazon Fresh & Whole Foods
Amazonは、EC基盤を活かした宅配サービス(Amazon Fresh)と、買収したWhole Foods Marketの実店舗ネットワークを融合させています。特にPrime会員向けの配送無料サービスは競争力が高く、オンライン×オフラインの相乗効果(OMO)を狙っています。
Kroger
Krogerはテクノロジー企業と提携し、ロボティクス倉庫やAIを活用した在庫管理を導入しています。地域密着型の店舗網を活かして、オンライン注文の効率化や宅配サービスの充実にも取り組んでいます。
Target
Targetは、非食品分野に強みを持つ一方で、食料品の比率も拡大しています。「Order Pickup」や「Drive Up」サービスを強化し、グロサリーを含むオンライン需要に対応しています。近年は食品物流への投資を加速しており、オンライン食料品市場での存在感を高めています。
日本での”グロサリー”
日本では「グロサリー」という言葉は一般的ではなく、スーパーやコンビニが生活必需品の供給源となっています。当社グループでもオンライン販売(ネットスーパー)を拡大しつつありますが、これらの比率もまだ数%にとどまります。
一方、米国ではEC利用が急速に拡大しており、日用品の購買習慣そのものが変化しています。
まとめ
グロサリーとは、米国小売・流通業界を理解するうえで欠かせない基本概念です。食品・日用品の供給という日常的な役割を担いながら、サプライチェーン効率化やEC市場の拡大といった業界の最新トレンドにも直結しています。
今後はオンライングロサリーのさらなる成長に伴い、伝統的なスーパーマーケットの在り方や、流通インフラの整備にも大きな変化が訪れるでしょう。当サイトでも引き続き注視していきます。
ぜひ、今回の記事を同僚・新入社員の皆さまなど周りの皆さまへご共有いただき、グロサリーに関する理解を深めていただけますと幸いです。
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