当社若手社員レポート アメリカ流通事情視察(ロサンゼルス)

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流通視察ドットコムでは、流通・小売業の皆さま向けに海外視察ツアーを定期的に企画・実施しております。1名からお申し込みいただけ、限られた日程でも見どころを押さえられるよう、視察先を厳選しています。

また、募集型ツアーに加え、お客さまの目的や訪問テーマに合わせたオーダーメイドの視察・海外研修旅行のご相談も承っております。若手社員・新入社員向けの研修としてご活用いただくケースも多くございます。

今回は、当社若手社員が「アメリカ流通事情視察(ロサンゼルス)」に参加した際の現地レポートをお届けいたします。

本レポートについて

本レポートは、当サイトで募集を行い、2025年11月に催行された【25年11月出発】アメリカ流通事情視察(ロサンゼルス)へ当社の若手社員が同行し、ロサンゼルスで訪問した小売各社の売場づくりや価格、プライベートブランド(PB)、レジ体験などを、現地での視察内容を基に整理したものです。

若手社員が視察で何を見て、どのように気づきを整理していくのかという点でも、視察参加後のアウトプットの一例として参考にしていただければ幸いです。

①アメリカを代表するスーパマーケット 3店舗を比較

スプラウツ・ファーマーズ・マーケット(Sprouts Farmers Market)

訪問場所:8985 Venice Blvd. B, Los Angeles, CA 90034

スプラウツ・ファーマーズマーケット(Sprouts Farmers Market)は、アリゾナ州フェニックスに本社を置き、全米24州に464店舗(2025年9月時点)を展開する自然食品・健康食品を主軸とした小売チェーンです。

フルーツスタンド文化をルーツに、ファーマーズマーケットの「市場感」を売場で再現している点が特徴です。生鮮野菜や果物を中心に据えた品揃えに加え、オーガニック・ナチュラル食品の比率が高いことも強みとなっています。

店内は木箱を用いた陳列によって自然な温かみが演出されており、量り売りのスタイルを取り入れることで、市場さながらの雰囲気が再現されています。内装は全体的にナチュラルなトーンで統一されており、「素朴さ」「親しみやすさ」を感じさせる空間となっていました。

商品の配置については、店舗の手前にデリや惣菜を置き、奥に生鮮品を配置するレイアウトが採用されていました。日本のスーパーマーケットとは導線の考え方が異なり、入店直後に手軽なニーズに応える設計が特徴的だと感じました。

また、青果の多くが寝かせるように置かれていた点も印象的でした。

あえてきっちりと並べ過ぎず、少しラフに見せることで、採れたての鮮度感や自然のままの雰囲気がうまく表現されています。見ているだけで手に取ってみたくなるような、視覚的にもリラックスしたマーケットらしさが感じられました。

価格については、ミニトマトは2パックで$7オーガニックスープは$12.99全体的にはリーズナブルな価格帯で、一部のオーガニック商品の価格は高めに感じられるものの、ブランドが訴求する価値を踏まえると妥当であり、中間所得層を中心に支持される価格帯だと感じました。

エルーワン・マーケット(Erewhon)

訪問場所:9300 Culver Blvd Suite 101, Culver City, CA 90232

エルーワン・マーケット(Erewhon)は、ロサンゼルスを中心に10店舗(2025年2月時点)を展開する、高級志向の自然食品スーパーマーケットです。

取り扱う商品については、「Erewhon Standard」と呼ばれる独自の厳しい基準を設けており、食品のみならずトートバッグやボトルなどの生活雑貨商品の人気も高いです。規模は小さいものの、セレブ層や強い健康志向をもつ顧客に圧倒的な支持を得ているブランドとなります。

店内は、素朴で親しみやすい雰囲気のSprouts Farmers Marketとは対照的で、落ち着いたBGMと整えられた陳列がつくる「洗練された高級感」が際立っていました。売場全体もスタイリッシュなトーンで統一され、空間そのものがブランドの世界観を体現している印象でした。

また、PB商品の展開も厚く、店内の随所で「Erewhon」の表記が目に入ります。ロゴの露出や商品構成を通じて、Erewhonならではの唯一無二のブランド力を強く感じることができました。

青果は、Sprouts Farmers Marketと同様に袋詰めにはせず、そのまま陳列されていました。

一方で、商品は一つひとつが均等に整列され、まるでデザインされたディスプレイのような「整えられた美しさ」が際立っていました。Erewhonらしい高級感やスタイリッシュさを一段と引き立てていると感じました。

価格については、ミニトマトは1パック$5.9オーガニックスープはPB商品も展開されており、最も安価なもので$15.50でした。

Sprouts Farmers Marketと比較しても明確に高い価格設定で、原材料に対する厳しい基準などが反映された、高品質志向の価格帯が特徴的でした。

ホールフーズ・マーケット(Whole Foods Market)

訪問場所:6350 W 3rd St, Los Angeles, CA 90036

ホールフーズ・マーケット(Whole Foods Market)は、アメリカ発のオーガニック系スーパーマーケット最大手で、現在はAmazon傘下として北米で545店舗(2025年6月時点)を展開しています。

また、既存スーパーの買収や統合を通じて全国規模へ拡大してきた経緯を持つ点は、Sprouts Farmers MarketやErewhonとは異なる、大手チェーンならではの強みと言えます。自然食品や生鮮、デリに加え、日用品まで幅広く取り扱う総合型のオーガニックSMとして成長してきたブランドです。

店内はカテゴリーごとに整理されており、今回視察したオーガニック系SM(スーパーマーケット)3社の中では、日本のスーパーマーケットに最も近い売場構成でした。生鮮食品に加えて、サプリメントや雑貨なども幅広く揃っており、品揃えの充実度も印象に残りました。

清潔感と利便性、商品の豊富さがバランスよく調和した空間設計になっており、Sprouts Farmers Marketの「親しみやすさ」とErewhonの「高級感」を程よく併せ持つ雰囲気を感じました。

青果は他の2店舗と同様に袋詰めにはせず、そのまま陳列されていました。

しかし、Sprouts Farmers Marketほど素朴でもなく、Erewhonほど整えられた美しさや高級感はありません。親しみやすさと見た目の整いがバランスよく調和しており、誰でも手に取りやすい雰囲気の売場となっていました。

価格についても、ミニトマトは最も安価なもので1パック$4.49オーガニックスープはSprouts Farmers Marketと同じ商品で$9.99となっていました。価格帯としてはSprouts Farmers MarketとErewhonの中間的なポジションにあり、3社の中では価格と品質のバランスが最も取りやすいという印象を受けました。

スーパーマーケット まとめ

店名 Sprouts Farmers Market Erewhon Whole Foods Market
ブランドイメージ 親しみやすい・素朴 高級・スタイリッシュ 洗練・バランス、安心感
デリ 少なめ
(サンドイッチ・サラダバー等)
充実
(サンドイッチの他、
ホットデリ・スムージー等)
充実
(サンドイッチの他、
ホットデリ等)
PB 商品 充実
(食品)
充実
(食品・アパレル)
充実
(食品・日用品)
陳列 量り売り・市場的 均等・魅せる陳列 種類豊富・整理された陳列
価格 低〜中価格 高価格 中〜高価格

Sprouts Farmers MarketErewhonWhole Foods Marketの3店舗を比較すると、いずれもオーガニック/ナチュラルという共通項を持ちながら、ブランドイメージは明確に異なっており、それぞれが市場内で独自の立ち位置を築いていることが分かりました。

Sprouts Farmers Marketは、素朴で親しみやすい売場づくりと手頃な価格帯で、日常的に自然食品を取り入れたい客層を中心に支持されるブランドという印象を持ちました。オーガニックやナチュラル食品を専門店ほど構えずに選べる点や、店内の温かみのある市場のような雰囲気がSprouts Farmers Marketならではの魅力だと感じました。

一方Erewhonは、高価格な商品構成にもかかわらず、徹底したクオリティ基準と洗練された世界観によってここでしか買えないという特別感を生み出しており、商品そのものだけでなくライフスタイルや価値観への共感を含めて支持を集めるブランドだと感じました。また、バッグやボトルといったアイテムが人気であることからも分かるように、Erewhon を利用することそのものが一種の自己表現やステータスになっており、ブランド力の強さを感じました。

Whole Foods Market は、Sprouts Farmers Market の日常的で親しみやすい雰囲気とも、Erewhon の高級感とも異なる、中価格帯でありながら高品質を安定して提供する中間的なポジションを確立しているブランドだと感じました。オーガニック食品スーパーのパイオニアとしての信頼性に加え、幅広いカテゴリーをバランスよく揃えており、身近なスーパーマーケットとして幅広い客層から支持を集めるブランドであると感じました。

②アメリカの主要ディスカウントストア Target と Walmart の2店舗を比較

ウォルマート(Walmart)

訪問場所:1340 S Beach Blvd, La Habra, CA 90631

ウォルマート(Walmart)は、アーカンソー州に本社を置き、全米に約5,200店舗以上(2025年10月時点)を展開する、世界最大級の総合小売企業です。

「Everyday Low Price」を中核としたビジネスモデルのもと、食品・日用品から家電、アパレルまで幅広い商品を低価格で提供しており、地域住民の生活基盤を支える存在となっています。

店内は通路幅が広く、カテゴリー別に明確に区分されたレイアウトが特徴的で、倉庫の中にいるような印象を受ける空間設計でした。

生鮮食品、デリ、ベーカリー、精肉、惣菜といったフルラインの食品売場に加え、日用品・衣料品・医薬品などの生活雑貨売場も併設されており、スーパーマーケットとディスカウントストアの機能を併せ持つ総合小売業としての特徴が強く現れていました。

また、セルフレジ台数が多いことも特徴的だと感じました。

セルフレジは、効率的でスピーディーな購買を支えているだけでなく、人件費なども削減でき、Walmartの低価格×大量販売×効率性というブランドイメージを象徴しているのではないでしょうか。

価格については、トイレットペーパーが$7.97コーンフレークが割引価格$5.64となっており、NB(ナショナルブランド)商品全体でも低価格な値段設定になっていました。

ターゲット(Target)

訪問場所:3030 Harbor Blvd A, Costa Mesa, CA 92626

ターゲット(Target))、ミネソタ州に本社を置き、全米で約2,000店舗(2025年11月時点)を展開するディスカウントストアチェーンです。

低価格帯でありながら洗練された店舗デザインと商品提案を強みに、ファッション・日用品・食品まで幅広いカテゴリーを取り扱っています。また、「Good & Gather」などのPB(プライベートブランド)の豊富さも特徴の一つです。

店内はカテゴリー別に明確に区分されている点でWalmartと共通していましたが、Walmartほどの圧倒的な広さはありませんでした。(※Targetは大型店舗化を推進しており、Walmartより大規模な店舗も拡大しています。)生活雑貨と日用品の売場が近接しており、全体としてまとまりのある、統一感の高い売場づくりだと感じました。

また、PB商品の展開量も多く、Erewhonと同様に「ここでしか買えない」という理由をつくり出し、Targetで買う動機につなげている点が印象的でした。

セルフレジは最小限に抑えられており、有人レジの比率が高い点が印象的でした。

さらにレジ周辺では、小物やPB商品が見やすく配置されており、来店客が店舗を出る瞬間まで「Targetらしさ」が伝わる工夫が施されています。会計が単なる精算作業にとどまらず、ブランド価値を体感させる接点として機能していると感じました。

価格については、トイレットペーパーが$7.99コーンフレークが$6.49となっていました。日用品などのNB商品はWalmartと比べるとやや高めに設定されているものの、体感として大きな価格差はありませんでした。

一方でPB商品の展開量が多く、価格もやや高めに設定されているため、PBの見せ方も含めてTarget全体の価格イメージに大きく影響しているように感じました

ディスカウントストア まとめ

項目 Walmart Target
ブランドイメージ 低価格・大量販売・効率性 「Cheap Chic」安くておしゃれ
レジ セルフレジが多い 有人レジが多い
PB 商品 種類豊富・価格訴求型 種類豊富・デザイン性や品質重視
店内の雰囲気・レイアウト 通路広々・シンプル・実用的 映える陳列・PB が目立つレイアウト
価格 全体的に低価格 NB 商品は Walmart 同様
・PB 商品はやや高め

WalmartTargetは、いずれもアメリカを代表する総合小売チェーンですが、店づくりや価格戦略、PB(プライベートブランド)の打ち出し方には明確な違いが見られました。

Walmartは徹底した低価格戦略を軸に、広い通路、倉庫型に近いレイアウト、多数のセルフレジなどを通じて、効率よく買い物を終えられる環境を整えていました。店内は機能性を優先した構成で、「必要なものを短時間で購入したい」というニーズに応える設計になっており、低価格×大量販売×効率性というブランドイメージが売場全体から伝わってきました。

一方のTargetは、Walmartよりやや高めの価格設定でありながら、店内のデザイン性や快適さを重視し、店舗体験を価値として提供している印象でした。売場は統一感があり、有人レジの比率も高く、接客や売場演出をブランド価値の一部として機能させています。またPBの展開量も多く、「ここでしか買えない」商品を通じて購買理由をつくり出し、Targetらしさを支える重要な要素になっていると感じました。

おわりに

今回レポートした5店舗は、売場づくりや価格帯、PB戦略などにおいて、それぞれ明確に異なる特徴が見られました。

低価格や品揃えの厚みを強みにする店舗がある一方で、品質や世界観、サービスを通じて付加価値を訴求する店舗もあり、各社が自社の強みを軸に競争環境の中で独自のポジションを築いていることが分かります。

いずれの企業も異なる顧客ニーズに応じた価値づくりを追求しており、米国小売企業における戦略の多様性が表れていました。

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