アウトドア大手のノースフェイス（The North Face）は2025年11月21日、ニューヨーク・マンハッタンのフィフス・アベニューに、同ブランドとして世界最大かつ最新の旗艦店舗をオープンしました。
新店舗はオフィスビルや観光客が行き交う五番街の中心エリア「511 Fifth Avenue」に位置し、2フロアで合計約1,950㎡（約21,000平方フィート）の売場を持つグローバルフラッグシップです。リアル店舗としては同社史上最大規模となり、ブランドの世界戦略における象徴的な拠点と位置づけられています。
ノースフェイス最大規模のグローバル旗艦店の概要
■新店舗所在地：511 Fifth Avenue, Manhattan(ニューヨーク)
新店舗は2フロア構成で、1フロアあたり約1,000㎡クラスのゆったりとした空間を確保しています。五番街沿いのガラスファサードからは、店内の大きな吹き抜けとLEDスクリーンの一部が外からも見える設計となっており、「街の中に突然あらわれるアウトドアの世界」を印象づける構えです。
店内では、ハイパフォーマンス志向のアルパインギアからライフスタイル用途のアパレルまで、同ブランドの主要カテゴリーを一堂に揃え、“アスリートテスト済み・遠征で実証済み”というブランドメッセージを体験できる売場づくりが行われています。
“above and below the treeline”を体現する2フロア構成
今回の旗艦店は、“above and below the treeline（森林限界の上と下）”というコンセプトでデザインされています。
1階（Below the treeline）
1階は、森の中や岩場など「森林限界より下の世界」をイメージした空間です。
多面体のグレーコルク壁には歴史あるクライミングルートのトポ図が刻まれ、テント生地を使ったランタンのようなライティングが柔らかい光を落とします。アーカイブアイテムと最新コレクションを組み合わせた展示により、ブランドの歴史と現在地を同時に感じられる構成になっています。
2階（Above the treeline）
2階は一転して、明るく軽やかな仕上げやテラゾーの床材、石を基調にしたケルン（登山の道標）風什器を用い、雪山や高地の世界観を再現しています。
ここではハイパフォーマンスなアルパイン向けギアを中心に展開し、フィッティングルーム横にはラウンジスペースも設置しています。ニューヨークの都市性と、ブランドがルーツとする山岳カルチャーをブレンドした空間となっています。
2.5階分のLEDスクリーンが生み出す“没入型”ブランド体験
店舗の象徴となっているのが、壁と天井を包み込むように設置された2.5階分の巨大LEDスクリーンです。
このスクリーンでは、クライマーであり映像作家でもある同ブランドのアスリート、レナン・オズターク氏がアイスランドの氷河で撮影した「Expedition Style Approach」シリーズなど、遠征中の映像コンテンツが上映されています。
店舗を訪れた消費者は、商品棚の間を歩きながら、まるで「地球の果て」へ向かう遠征に同行しているかのような映像体験を楽しむことができ、従来の「商品を見るだけの店舗」から一歩踏み込んだ、没入型のブランド空間がつくられています。
押さえておきたいポイント
抑えておきたいポイントは以下の通りです。
- 体験起点で組み立てたフロア構成：商品カテゴリー別でなく、「森林限界の上下」というストーリーでゾーニングしている点は、体験型旗艦店づくりのヒントとなる。
- 巨大LEDスクリーンによる“ストーリーテリング”：店頭サイネージに留まらず、店舗全体を包む映像でブランドの世界観を語る手法は、他業態でも応用可能なアプローチ。
- 都心一等地で“アウトドアらしさ”をどう表現するか：五番街という都会のど真ん中にありながら、素材・照明・映像を組み合わせて自然環境を想起させるデザインは、参考になるポイント。
ニューヨークの五番街にはラグジュアリーブランドや最新コンセプトストアが集積しており、「旗艦店の役割」「ブランド体験の見せ方」を比較視察するのにも最適なエリアです。現地視察の際は、ノースフェイスの新旗艦店もルートに組み込んでおきたい注目店舗となりそうです。
