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今回ご紹介する H-E-B(エイチ・イー・バット) は、テキサス州を拠点とするスーパーマーケットチェーンです。出店エリアはテキサス州とメキシコに限られるリージョナルチェーンでありながら、各種ランキングや顧客評価で全米トップクラスの評価を受けており、地元テキサスの生活に深く根付いた存在として知られています。
今回は、H-E-Bの成り立ちやブランドの考え方、主要な店舗フォーマット(業態)の特徴を整理しながら、なぜここまで地元で支持されているのか、その理由を分かりやすく紹介します。
●過去に募集したツアー一例
【26年2月出発】アメリカ流通事情視察(ダラス)コース
H-E-Bとは?テキサスを代表するリージョナルSMチェーン
創業の背景と現在の規模
H-E-B(エイチ・イー・バット) は、1905年にテキサス州サンアントニオを拠点として始まった、小さな家族経営の食料品店をルーツにもつスーパーマーケットチェーンです。現在も非上場企業として運営されており、リージョナル・スーパーマーケットチェーンとして独自のポジションを築いています。
出店エリアは、テキサス州を中心に、メキシコでもスーパーストア、スーパーマーケット、グルメマーケット、コンビニエンスストア等を展開しています。店舗数はおよそ400店舗とされ、従業員(H-E-Bでは「パートナー」と呼称)は 約154,000人 にのぼります。
全米展開のチェーンではなく、商圏をテキサスとメキシコに絞り込んでいるにもかかわらず、規模としてはアメリカ食品スーパーの中でも上位クラスに入る存在です。
「アメリカ人が好むグロサリーストアランキング2024」での評価
アメリカの消費者を対象にした調査 「アメリカ人が好むグロサリーストアランキング2024」では、H-E-B が全米の世帯を対象としたランキングで1位に選ばれています。これはアメリカ国内10,000世帯を対象にしたアンケートで、アメリカを代表する主要65のグロサリー小売企業の中で、対象の世帯が最も評価する(好きな)企業を選択した結果を集計したものです。
出店エリアはテキサス州およびメキシコに限られるリージョナルチェーンでありながら、全米の消費者を対象にしたランキングでトップに立つという結果は、H-E-Bが「テキサスのローカルスーパー」であると同時に、全米レベルでも評価されるスーパーマーケットであることを示しています。
「テキサスの人々の生活の一部」として深く根付いた存在であり、地元住民の支持を背景に、全国的な顧客調査でも高く評価されている点がH-E-Bの大きな特徴です。
「H-E-B」の由来とブランド哲学

名前の由来とスローガン
「H-E-B」という名称は、創設者の家族であり、事業拡大に大きな役割を果たしたHoward E. Butt(ハワード・E・バット)のイニシャルに由来しています。
現在では、この頭文字にあわせてHere Everything’s Better(ここでは、すべてがより良い)という意味を持たせたスローガンが掲げられており、「暮らしをより良くする場所」でありたいというブランドの姿勢を表しています。
テキサスが「故郷」と呼ぶブランド
公式サイトなどでは、H-E-Bを「The brand Texas calls home(テキサスが故郷と呼ぶブランド)」と表現しており、単なるスーパーマーケットではなく、テキサスの生活・文化と結びついた存在であることを強く打ち出しています。
実際に、H-E-Bは地元産品の積極的な取り扱い・地域のイベント・スポーツとの連携・緊急時の災害支援や食料支援といった活動を続けており、「テキサスの誇り」として認識されるブランドになっています。
社会貢献と企業評価
H-E-Bの特徴として、社会貢献へのコミットメントも挙げられます。例えば、以下のことが紹介されています。
- 利益の5%を、飢餓救済・教育・環境・多様性促進といった社会貢献に寄付していること
- フォーブス誌の「アメリカ最大の非上場企業」ランキングで上位に入る規模であり、「社会的影響力ある企業」としても複数のランキングに登場していること
このような取り組みは、単に売上・店舗数の大きさだけでなく、「地域社会にどのような影響を与えているか」という観点でも評価されているチェーンであることを示しています。
見逃せないH-E-B の4大業態
H-E-Bは、単一のスーパーマーケットだけでなく、顧客層やニーズに合わせて複数の業態(フォーマット)を展開しています。視察の際には、「どの業態の店舗なのか」 を意識して見ることで、戦略の違いが分かりやすくなります。
H-E-B スーパーストア
H-E-B スーパーストアは、生鮮食品から日用品まで幅広い品揃えを持つ、いわば「街の台所」のような存在です。
郊外型の大型店舗として地域密着型の大型(フルライン)SMを志向しており、生鮮・グロサリー・日用品に加えて、アプリ連動などのデジタルサービスも取り入れています。
日常使いのメイン店舗として機能しているのが特徴です。
Central Market(セントラル・マーケット)
Central Market(セントラル・マーケット) は、H-E-Bグループの中でも高級オーガニック食品・グルメ食材・ワインやデリカテッセンといったカテゴリーを強みにした、プレミアム志向のグルメマーケットです。
日本ではなかなか見られないようなワインセレクションやデリ売場、「食品劇場型」ともいえる売場演出が特徴で、“食の体験”を重視した業態と言えます。
Mi Tienda(ミ・ティエンダ)
Mi Tienda(ミ・ティエンダ) は、ヒスパニック文化圏の食生活に焦点を当てた業態です。メキシコや中南米の食材を中心に品揃えを構成し、食品だけでなく伝統的な雑貨や季節のイベント関連商品も扱うことで、店内全体にラテン系マーケットの雰囲気を前面に出しています。
地域の顧客構成に応じてフォーマット自体を切り替える好例であり、「誰に向けた店なのか」を明確にしたコンセプト設計を学べる事例と言えます。
Joe V’s Smart Shop (ジョーV’sスマートショップ)
Joe V’s Smart Shop(ジョーV’sスマートショップ) は、低価格を前面に打ち出したフォーマットです。一般的なH-E-Bよりも品揃えを絞り込み、プライベートブランド(PB)を中心とした構成にすることで、価格を抑えたバリュー型(低価格重視)のスーパーマーケットとして設計されています。
どこまでサービスや品揃えを削ぎ落とし、その分を価格に振り向けるのかという、フォーマット設計上の割り切り方を読み取ることができる業態と言えるでしょう。
H-E-B Plus
H-E-B Plus は、非食品カテゴリーを強化した大型フォーマットです。食品に加えて家電や文具、日用雑貨などの売場を大きく拡張しており、 生鮮・グロサリーをベースにしながら、生活に必要なものをワンストップでまとめて購入できるハイパーSMの店づくりを志向しています。
一般的な食品スーパーと総合小売の中間に位置づけられるフォーマットと言えるでしょう。
ダラス視察のおすすめポイント
ダラスは、アメリカ南部のビジネスハブとして位置づけられる都市です。小売のイノベーション・巨大な物流ネットワーク・成長する人口と多様な市場が交差するエリアであり、小売・流通業にとっても非常に重要なマーケットです。
中南部の一大ハブマーケットとして活発な商品流通が続いていることから、さまざまな消費者ニーズに応じた新しい小売戦略や、最新の流通事情を一度に体感できる都市と言えます。
●過去募集したツアーの一例はこちら
アメリカ流通事情視察(ダラス)コース
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