
今年1月の弊社メールマガジン「USA Todayが選ぶベスト・グロサリーストアランキング2024」にて、アメリカ最大の情報誌およびニュースサイトであるUSA Today社がまとめた2024年版ランキングをご紹介しましたが、最新の2025年度ランキングが発表されたのでご報告します。
前回も説明しましたが、このランキングはUSA Today社が定期的に行っている「10ベスト・リーダーズ・チョイス(10 Best Readers’ Choice)という調査プロジェクトの一つで、旅行先、飲食店、ホテル等様々なカテゴリーのサービスプロバイダーを対象に、その分野の専門家とUSA Todayの編集者達が最も優秀と思われる評価対象候補をリストアップし、その中からUSA Todayの読者が4週間にわたり毎日1票ずつ投票したものを集計してランキング化したものです。
ベスト・グロサリーストアTOP10
繰り返しになりますが、アメリカの6万を超えるグロサリーストアの中で、最も品揃えや優れたサービス等で、存在価値を認められた上位10社の最新ランキングは以下の通りです。
2025 順位 | 企業名 | 2024 順位 |
---|---|---|
1 | The Fresh Market(フレッシュ・マーケット) | 2 |
2 | Hy-Vee(ハイヴィー) | 1 |
3 | Fresh Thyme Market(フレッシュ・タイム・マーケット) | 10 |
4 | Natural Grocers(ナチュラル・グローサーズ) | – |
5 | Stew Leonard’s(スチュー・レオナルド) | 4 |
6 | Gelson’s Markets(ゲルソンズ) | 5 |
7 | Aldi(アルディ) | 6 |
8 | Heinen’s Grocery Store(ハイネンズ・グロサリーストア) | 3 |
9 | Publix Super Markets(パブリクス) | 7 |
10 | Wegmans Food Markets(ウェグマンズ) | 9 |
2025年の米国グロサリー市場は、値ごろ感の厳格な見極めが続く一方で、購買行動の分散がさらに進みました。食料品の価格上昇は鈍化したものの、家庭で消費する食品の価格(FAH/Food-at-Home)は2025年8月時点で前年比+2.7%と、依然として家計を圧迫している状況です。その結果、消費者はより多くの店舗を訪問して安い食料品を探す傾向が強まり、一人の消費者が年間で平均20.7店舗を訪問しているというデータも報告されており、ワンストップからマルチストップへの購買行動に変異しているとウォール・ストリート・ジャーナルもレポートしています。
利便性と価格訴求の両立が求められている
一方、オンライン食料品も伸びており、2025年8月に月間112億ドルの過去最高を更新するなど、実店舗とECの使い分けが進み、利便性と価格訴求の両立が求められるようになってきました。アメリカの市場調査会社大手eMarketer社のデータによると、価値志向はプライベートブランド(PB)の拡大にも波及し、2024年のPB売上は+3.9%とNBの約4倍の伸びを記録したということです。
さらに同社の別のデータによると有料会員・ロイヤルティの重要度が一段と上がり、2025年の有料会員収入は463.9億ドル(前年比+10.8%)と過去最高見込みということで、特典・価格・購買体験の三位一体で常連客の確保に成功した小売り企業が優位に立っているということです。
従って、「価値(価格×PB)」、「利便(店舗×EC)」、「関係性(会員)」の三つの軸を提供できた小売りチェーンが支持を拡大しており、今回の投票結果にも色濃く反映されたと言えます。
フレッシュ・マーケットが再び首位に
今回のランキングでは昨年1位だったハイヴィー(Hy-Vee)が2位に、一昨年まで3年連続トップで昨年2位となったフレッシュ・マーケット(The Fresh Market)が再び首位に戻りました。 フレッシュ・マーケットの概要については「USA Todayが選ぶベスト・グロサリーストアランキング2023」でご紹介しているのでそちらをご参照ください。また、今回2位のハイヴィーについては、昨年のメールマガジン「USA Todayが選ぶベスト・グロサリーストアランキング 2024」で詳しくご紹介しています。
3位に大躍進 フレッシュ・タイム・マーケット
今回は、昨年10位から3位に大幅にランクアップしたフレッシュ・タイム・マーケット(Fresh Thyme Market)についてご紹介します。
日本ではあまりなじみの無い小売企業ですが、フレッシュ・タイム・マーケットはアメリカの中西部を地盤とする自然派・健康志向の食品スーパーで、2014年にイリノイ州ダウナーズグローブで創業しました。業態は“リアルフードを手頃に”を掲げる地域密着型リージョナルチェーンで、中西部10州で70店舗を展開しています。
フレッシュ・タイム・マーケットの特徴
同社の特徴は、自然派×値ごろ編集型の中型スーパーチェーンで、上述の3つの軸である価値(価格×PB)・利便(店舗×EC)・関係性(会員)に力を入れています。
まず価値面では、日常価格で品質を訴求する自社PBを拡充しつつ、グルテンフリーやプラントベース(植物由来)など機能性カテゴリーを含むローカル食品を多く展開し、単なる低価格ではなく“良質で手の届く”選択肢を幅広く提供しています。さらにオンライン注文品のピックアップでも店頭と同一価格を適用することで価格面での信頼感を得ています。
次に利便面では、AI需要予測(Afresh)の活用により青果・精肉・鮮魚・デリを含む生鮮の発注精度と在庫最適化を進め、欠品・ロスを抑えながら鮮度体験を平準化し、アプリからの注文から店頭受取の導線や、外部配送の選択肢も整備し、来店客、オンライン客の双方で同様の満足度を得ることに成功しています。
評価の高いアプリ会員プログラム
顧客との関係性では、アプリ会員“MyThyme”の$10ウェルカム特典やバースデークーポン、会員限定割引を通じて、リピーターと自社ファン(指名買い)獲得のCRMを運用するなど高い評価を得ています。
他にも地域のフードバンク支援などコミュニティ貢献も可視化し、好感度を醸成しており、これらの取り組みは、「価格の分かりやすさ」「鮮度の安定」「会員を軸とした関係づくり」という日々の使いやすさに直結し、今回のランキングにもつながりました。
日本での知名度は低くても、卓越した特徴を持つ小売企業はほかにもたくさん存在しており、今後も折を見てご紹介していきたいと思います。