米国の食品小売売上ランキングでは、Walmart(ウォルマート)とAmazon(アマゾン)が1位、2位と並んでいます。今回の記事では、ドイツ発祥のハードディスカウントストアで食品小売売上ランキング25位、前年の28位から3ランクアップと躍進を続けているALDIと人気SMチェーンのトレーダー・ジョーズの関係をご紹介します。*出典元:2024Progressive Grocer集計より
PBの高比率とボックス型の効率的な店舗運営で成長を続けるALDIは、ALDI Nord (北アルディ)と ALDI SÜD(南アルディ)の2社体制で各地域をカバーしています。1976年にアメリカ進出したのは南アルディで、1979年には人気SMチェーンのトレーダー・ジョーズ(TRADER JOE’S)を北アルディが買収したことで知られています。
トレーダー・ジョーズとアルディ
Trader Joe’sとALDIとの関係は、1979年にALDI Nord(北アルディ)がTrader Joe’sを買収したことに始まります。Trader Joe’sはもともと1967年にジョー・コロンブがカリフォルニア州パサデナで創業したユニークな食料品店でした。そんなTrader Joe’sのコンセプトに目をつけたのが、ALDI Nordの米国市場進出のきっかけとなったのです。現在もTrader Joe’sはALDI Nordの傘下です。
ALDIの二社体制(ALDI NordとALDI Süd)
ALDIの誕生
創業は1948年、ドイツ・エッセンでアルブレヒト兄弟が母親の食品店を継承してスタートしました。1952年にボックスストア(現HDS)を開発して急拡大、1973年のオイルショック期に店名を「アルブレヒト」から「ALDI」(Albrecht Discountの略称で「ALDI」)へ変更し、欧州・米国に進出しました。ボックス型ハードディスカウントの形態で、ケース積み・オープンカートン・パレット陳列を行い、内装コスト最小化、PB比率90%以上、SKUは約1,400~1,500を特徴とし、低コスト・低価格を実現しています。
二社体制(ALDI NordとALDI Süd)
1960年代、ALDIチェーンを北(エッセン)と南(ミュルハイム)に分割しました。基本、ハードディスカウントストアというモデルであることは共通ですが、品揃え・店舗体験・ブランド運用に若干の違いがあります。
■ALDI Nord (主な管轄国 : フランス、スペイン、ベルギー、オランダ、ポーランドなど。米国はTrader Joe’sで展開)
プライベートブランドでは、 Gut Bio(オーガニック)、Trader Joe’s(ドイツではALDI Nord側のPB名)、Beste Qualität(高品質商品系)などに、Nord独自のPBが多くあります。その他、地域色に合わせ、北・東ドイツの需要にを考えた品揃えの微調整(魚加工品・パン類のバリエーションなど)がされています。店舗デザインやレイアウトも、近年改装で明るくはなっているが、Südと比べるとレイアウトや導線の統一度が多様です。
■ALDI Süd (主な管轄国 : 米国、英国、アイルランド、オーストラリア、スイスなど)
統一感の高い店舗設計が特徴です。新フォーマットが多く通路幅、照明、コールドチェーン什器などがかなり標準化されています。プライベートブランドでは、Milsani(乳製品)、Choceur・Moser Roth(菓子/チョコ)、Simply Organic/AlnaturaなどがSüd系として充実しています。見せ方も(陳列)も、青果・精肉(加工肉含む)・乳製品のコーナーを拡大し「新鮮さ」を訴求する傾向が強いです。
つまり、アメリカにはALDI Südが運営する「ALDI」と、ALDI Nordが所有する「Trader Joe’s」の2つのブランドが存在してるということになります。それぞれ違う戦略で展開していますが、どちらもドイツの同じ家族から生まれた兄弟ブランドとも言えます。
ALDIとTrader Joe’sの視察の際に、見るべきポイント
双方の店舗を視察する際は、背景を理解し、その違いや類似点などに注目しながら見るのも面白いでしょう。
- PBのSKU設計と棚づくり(オープン・カートン・パレット運用)
- シンプルなオペレーションとコスト最適化
- 米国での2つのブランド(ALDIとTrader Joe’s)の住み分け
- インフレ環境での需要取り込み
まとめ
当社トレンドピックアップでも、このところ店舗閉鎖を発表する小売業社を多く取り上げています。インフレの勝者とも言える、ALDIとTrader Joe’s。相次ぐ新店舗オープンで存在感を拡大しています。両社は「安いだけじゃない」低価格・高品質のプライベートブランドを次々と打ち出し、賢い消費者から熱い支持を獲得しています。特にTrader Joe’sは、店内ポップや限定PBで“選ぶ楽しさ”を演出し、買い物そのものをエンタメ化。値打ちとワクワクを両立する両ブランドの動向に注目です。