アメリカのコンビニエンスストア(コンビニ、米国ではC-storeとも)は、日本と同じく生活動線に密着した業態でありながら、ガソリン併設型を中心に発展してきた点で市場構造が大きく異なります。さらに近年は、出来たてフードやコーヒー、ロイヤルティアプリの強化が進み、「燃料×フード×利便」の三位一体で競争力を高めるチェーンが存在感を増しています。
今回は、アメリカ コンビニの店舗数ランキングを起点に、主要チェーンの勢力図と市場の特徴を2025年の最新情報で整理します。
アメリカ・コンビニ店舗数ランキングTOP10(2025)
このランキングは、イリノイ州シカゴに拠点を置き、BtoBベースでコンビニ、石油小売り、フードサービス業界等の市場調査、市場分析、経営アドバイス等のサービスを提供しているウィンサイト(Winsight, LLC/現Informa Connect傘下)が公表する、「Top 202 Convenience Stores 2025」をベースに、アメリカのコンビニ店舗数ランキングの最新動向を整理したものです。
なお、同ランキングの店舗数は2025年1月1日時点の集計となります。
| 順位 | 企業名 | 店舗数 | 前年順位 |
|---|---|---|---|
| 1 | セブン・イレブン (7-Eleven) |
12,600 | 1 |
| 2 |
アリマンタシォン・クシュタール (Alimentation Couche-Tard ) ※サークルK |
7,107 | 2 |
| 3 | ケーシーズ (Casey’s General Stores) |
2,890 | 3 |
| 4 | マーフィ (Murphy USA) |
1,757 | 4 |
| 5 | BPアメリカ (BP America) |
1,566 | 7 |
| 6 | EGアメリカ (EG America) |
1,464 | 5 |
| 7 | GPMインベストメント (GPM Investments) |
1,389 | 6 |
| 8 | エクストラマイル (ExtraMile) |
1,123 | 8 |
| 9 | クイックトリップ (QuikTrip) |
1,177 | 9 |
| 10 | ワワ (Wawa) |
1,100 | 10 |
7-Elevenが断トツの首位を維持し、Circle K(Couche-Tard)、Casey’sが続く構図は2025年も大きく揺らいでいません。
1位:セブンイレブン(7-Eleven)の圧倒的スケール
7-Elevenは12,600店で1位を維持しています。米国においてもM&Aやフォーマット拡張を継続しており、規模の優位性を背景に商品開発・ロイヤルティ・店舗DXの面で影響力が大きい存在です。
2位:サークルK(Circle K)を擁するCouche-Tard
Couche-Tardは7,107店で2位。グローバルでは約17,300店規模、北米では米国に7,300超の拠点を持つと同社は説明しています。
2025年はネットワーク最適化の一環として、一部店舗の売却検討といった動きも報じられています。
3位:Casey’sの“食×郊外・地方”モデル
Casey’sは2,890店で3位。同社はピザなどのフード力で知られ、CEFCO買収などで南部・中南部へ存在感を拡大しています。
大型化する店舗設計やイートイン要素の強化は、アメリカ型コンビニがQSR領域に踏み込む潮流を象徴します。
州別の分布
州別に見ると、コンビニの集積は“人口規模×車社会×物流動線”と強く連動しています。トップ10州は以下の通りです。
| 順位 | 州名 | 店舗数 |
|---|---|---|
| 1 | テキサス | 16,416 |
| 2 | カリフォルニア | 12,169 |
| 3 | フロリダ | 9,732 |
| 4 | ニューヨーク | 7,704 |
| 5 | ジョージア | 7,053 |
| 6 | オハイオ | 5,795 |
| 7 | ノースカロライナ | 5,779 |
| 8 | ミシガン | 4,986 |
| 9 | ペンシルベニア | 4,819 |
| 10 | イリノイ | 4,735 |
上位10州で全体の約半数を占める計算となり、市場の厚みが特定州に集中する構造が確認できます。車社会と幹線道路需要に支えられた燃料併設型の強さが、州別分布の差に反映されやすい状況です。
「店舗数では分散、売上では集中」になりやすい構造
店舗数ベースの見え方
アメリカのコンビニ市場は、日本と比べて特定企業による市場の寡占化が進んでいないと言われることがあります。
全米コンビニエンスストア協会(NACS)のTop 100 Convenience Retailers of 2025では、アメリカのコンビニ店舗総数は152,255店で、セブン・イレブンのシェアはわずか8.6%程度となります。“巨大チェーンが存在しても市場の裾野が厚い”という米国市場の特徴を示す分かりやすい指標といえます。
なお、日本のコンビニ市場でもセブン・イレブンがトップを走りますが、2022年度の売り上げベース市場シェアは46.1%、店舗数ベースで38.4%とどちらも非常に高いのが特徴です。また、日本では首位のセブン・イレブンに続いて2位のファミリーマート、3位のローソンの上位3社による店舗数シェアが93.1%という極端な寡占状態となっています。
売上ベースの存在感
しかし、非常に小さなコンビニ店舗やチェーンが非常に多いアメリカでのセブン・イレブンの売り上げベースでの市場シェアとなると、IBISWorldの企業情報では、7-Elevenが米国コンビニ業界収益の約35%を占める推計が示されています。
店舗数シェアより大きな存在感が示唆される点が特徴です。燃料・フード・ロイヤルティを組み合わせてスケールで収益を積み上げる上位チェーンの構造が、この差を生みやすい状況です。
ガソリン併設型コンビニが支える米国モデル
アメリカのコンビニのもう一つの大きな特徴として、約80%の店舗(118,678店舗)がガソリンスタンドを併設しているということで、ガソリンの売上額がコンビニでの商品売り上げの約1.5倍を占めているという点が挙げられます。日本でもガソリンスタンド併設のコンビニは増えてはいるものの、現在約16%程度で、アメリカに比べてまだまだ少ないのが現状です。
そもそもアメリカのコンビニは、後に現在のセブン・イレブンになるサウスランド・アイス・カンパニー(Southland Ice Company)が、1927年に年中無休で毎日16時間オープンしている小売店舗を始めたことから始まっており、朝7時から夜11時まで営業していたことから1946年に現在のセブン・イレブンという名称に変更されました。
1971年時点でガソリンスタンドを併設していたコンビニはわずか7%程度でしたが、その後2回に渡る世界的オイルショックにより、ガソリン代節約のため買い物と給油をワンストップでできるコンビニの需要が高まり、その後10年で一気にガソリンスタンド併設型コンビニが増えたという経緯があります。
この流れは現在も変わっておらず、トップのセブン・イレブンは、2018年にガソリンスタンド併設型コンビニを展開していたスノコ(Sunoco)1,030店舗、2021年にはガソリンスタンドを運営するマラソン・ペトロリウム(Marathon Petroleum)社が展開していたコンビニチェーンのスピードウェイ(Speedway)約3,800店舗を買収するなど、ガソリンスタンド併設型コンビニの拡大を進めてきております。
なお、4位に入っているマーフィ(Murphy USA)は、ガソリンスタンド併設型コンビニというより、コンビニ併設型のガソリンスタンドという位置づけの企業で、多くのガソリンスタンドをウォルマートの店舗敷地内あるいは隣接地にて展開することで業績を伸ばしています。
イギリス拠点の世界的市場調査会社ユーロモニター(Euromonitor)社のデータによると、アメリカの全グロサリー売上額に占めるコンビニ業態のシェアは約10%(ガソリン売り上げは除く)で、日本のコンビニの約21%と比べるとコンビニの存在感が低い状況ですが、今後5年間のCAGR(年平均成長率)は6.6%で、コンビニ以外の5.5%を上回る見通しとなっています。
おわりに
2025年の米国コンビニ市場は、7-ElevenとCircle Kを頂点とする大規模チェーンの拡張と、地域ごとに特色を持つ中堅・ローカルチェーンの競争が同時に進む局面です。全米店舗数は152,255店舗で高水準を維持し、燃料併設モデルが依然として業態の骨格を支えています。
店舗数ランキング、売上集中度、州別分布の3点を組み合わせて捉えることで、米国コンビニの競争環境はより明確になります。今後も引き続き動向に注目していきます。