米国小売企業 来店頻度から見る顧客ロイヤルティランキング

ショッパーマーケティング大手のインマーケット(InMarket)社が四半期ごとに発表している、顧客ロイヤルティレポート(Retail Loyalty Report)という報告書があります。

今回のメールマガジンではこの顧客ロイヤルティレポートの最新版、2021年第2四半期(4月〜6月)の結果をご報告します。

以下が上位10社のランキングです。

このデータはインマーケット社が独自に開発し、多くのモバイルアプリに搭載されているロケーションデータ認識機能から抽出した消費者の小売店舗への訪問履歴をまとめたものです。

従って従来の顧客へのアンケート等を通じて集約した満足度等のロイヤルティとは違い、あくまでも消費者の来店頻度という客観的な数値をまとめたものとなっています。  

記載されている数値は、この期間の顧客一人当たりの平均来店回数です。

今回の調査対象期間である第2四半期全体の平均スコアは1.33で、上記のトップ10企業はいずれも平均を大きく上回る結果となりました。

ただし第1四半期(1月〜3月)の平均スコアを確認してみると2.02でしたので、この3か月間で顧客の店舗への訪問回数は大幅に減少したことが窺えます。

最大の要因には、新型コロナウイルスのワクチン接種者数が大幅に伸びたことで感染者数も減少傾向となり、消費者の行動が活発になり始めていた第1四半期に対して、第2四半期は日本でも猛威を振るっているデルタ株などの変異株によって感染者数が再増加したことで、マスク着用の再ルール化等による外出控えムードとなったことが大きく影響しているようです。

ちなみに第1四半期の上位3社とスコアは次の通りでした。

1位 ウォルマート 5.95

2位 マイヤー 4.44

3位 ターゲット 3.55

ウォルマートは2期連続でトップとなっておりますが、アメリカ国民の約90%がウォルマート店舗から10マイル圏内に住んでいるという店舗数の多さに加え、豊富な品ぞろえと安定した価格の安さが最大の魅力となっています。

今年2月に当社トレンドピックアップでもご紹介しましたが、 ウォルマートは昨年9月から新たなサブスクリプションサービス「ウォルマートプラス(Walmart+)」を導入しました。 

年会費99ドルまたは月会費12.95ドルを支払うことで、ウォルマート店舗からの食料品等の配送料が無制限で無料となるサービスです。最新のドイツ銀行のレポートによると、今年2月の時点で約820万人だった登録者数が、導入から1年が経過した現在では3,200万人を超えたということです。会員になることで、無料配送に加えて、ガソリンの値引きやウォルマート店舗内クリニックでの処方薬が最大85%割引になるなど、店舗への来店誘導効果も高く、今回の結果に繋がっていると思われます。

今回2位に入ったフレッド・マイヤーは、全米最大のスーパーマーケットチェーンであるクローガーの傘下企業です。

第1四半期の5位(スコアは3.30)から2位に大きくランクアップしておりますが、この期間クローガーが全社で推進したワクチン接種促進プロジェクトによって多くの来店者数を獲得しました。

このプロジェクトは、頭打ちとなっているワクチン接種者数を国の目標70%を達成するために実施されたものです。この期間にクローガー関連店舗内クリニックにてワクチン接種を受けた消費者のうち、抽選で5名に現金100万ドル、更に5週にわたり毎週10名(計50名)に1年分の食料品が無料となるクーポンを進呈するという大規模なキャンペーンによって店舗への集客に繋げました。

最後に今回特筆すべき点として、百貨店業態で初めてノードストロームがランクインしたことがあげられます。

2021年5月1日に終了した同社の第1四半期の純売上高が前年同期比で44%増の29.2億ドルを記録。また発表されたばかりの第2四半期の純売上高も前年同期比で100%を超える等大きく業績を伸ばしていることが反映されたようです。

今まで当社メールマガジンやトレンドピックアップにて、ロイヤルティを含め小売企業に関する様々なランキングを紹介してきましたが、多くは消費者へのアンケートによるものでした。今回のレポートのような客観的事実に基づくデータランキングについても今後注目をしていきたいと思います。


(2021.9.21配信/記事作成:イオンコンパス(株)営業戦略部)

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