世界的危機下で信頼される小売企業

今年に入り急速に拡大している新型コロナウイルス(COVID-19)は、世界中で前例のない様々な被害をもたらしており、世界保健機構(WHO)の3月31日現在のデータによると世界の感染者数が78万人を超え、死亡者も3.7万人ということです。 

特にアメリカでは3月に入り状況が劇的に悪化しており、感染者数が16.1万人を超え、死亡者も3,000人に迫っております。 アメリカの民間企業を対象とした‘雇用の質’についての統計調査(JQI – Job Quality Index)を行っているコーネル大学ロースクール(Cornell Law School)の最新のデータによると、今回の新型コロナウイルスにより3,700万人以上の雇用に多大な影響を及ぼすことになるだろう予測しております。

そのレポートで最も影響を受ける(すでに受けている)と指摘している3業態は以下の通りです。

◎新型コロナウイルスで最も影響を受ける業種 (コーネル大学ロースクールデータ)

① 飲食業(Food & Drink)

約1,100万人

② 小売業(Retail)

約770万人

③ レジャー・観光産業(Travel, tourism & Leisure)

約470万人

全米経済研究所(NBER – National Bureau of Economic Research)によると、リーマンショック後の2009年6月から現在まで続いている第2次世界大戦後のアメリカ歴史上最長の景気拡大期間が今回の新型コロナウイルスにより終焉を迎える可能性が極めて大だと述べてます。

昨年12月のメールマガジン「2019年米国小売総括&年末商戦速報」や今年1月の「2020年注目企業!グロサリー・アウトレット」でもご報告したように、昨年はアメリカの小売企業の閉店数が過去最高となり、アメリカ小売り業界シンクタンク大手のコアサイト・リサーチ(Coresight Research)社の最終報告によると昨年1年間で9,548店舗が閉鎖されたということです。

しかし同社の予測では、今回の新型コロナウイルスの影響による2020年の店舗閉鎖数は15,000店舗を超えるだろうとのことで、まさに緊急事態となっています。

このような危機的な状況の中、シカゴを拠点としてショッパーマーケティングに関する調査研究およびコンサルティングを行っているパス・トゥ・パーチェス(Path to Purchase Institute)社が3月13日から15日の期間にアメリカの1,001世帯を対象に、新型コロナウイルスによる脅威にさらされている中での購買行動に関する調査を行いました。

調査結果をいくつかピックアップしてご紹介します。

◎購買行動の種類(Path to Purchase Institute社データ)

購買行動の内容

行動した割合(%)

食料品、日用品、消耗品の買いだめ行動

44%

買い物前のショッピングリスト作成

31%

事前にメニューを決めてからの買い物

28%

セール品の買いだめ

27%

クーポンの利用

24%

複数店舗間での価格の比較

22%

これは昨年までの平常時と比べて、現在の購買行動にどのような変化が出たかというものですが、回答者の44%が日用品や消耗品の買いだめを行ったということです。

アメリカのあらゆるスーパーマーケットやドラッグストアなどの小売店において食料品やトイレットペーパーなどに消費者が殺到している様子は様々なメディアにより報道されている通りです。(※アメリカだけでなくヨーロッパでも日本でも同様)

ただ、むやみに買いだめに走るのではなく、平時に比べて事前のショッピングリストを作成する人が31%、事前にメニューを決めたうえで必要な材料を買いに出た人が28%、複数店舗間での価格の比較を行う人が22%増えている等、冷静な購買行動も増えているのが興味深い特徴だと述べています。

この調査の中でもう一つ大きな特徴として紹介されているのは、この緊急時においても多くの消費者は商品の価格に非常に敏感であるということで、セール品の買い物をした27%の消費者を含めた83%が最も安い商品やお値打ち品の購入を優先したということで、わずか10%の回答者だけが価格に関係なく欲しいものを購入したということです。

この緊急時においてもやはり商品の価格は重要なファクターであるということが分かります。

また、外出して感染することへの懸念から食料品をオンラインで購入する頻度も以下の回答結果の通り上がっているということです。

◎食料品のオンラインショッピングへのシフト(Path to Purchase Institute社データ)

 購買行動の内容

平時との比較(%)

オンラインで注文して店舗でピックアップ

19%

オンラインで注文してホームデリバリーを選択

18%

オンラインで注文して店舗パーキングでピックアップ

18%

最後に、この非常時に信頼できる商品ブランドとして消毒液メーカーのライゾール(Lysol)社, 漂白剤メーカーのクロロックス(Clorox)社やアルコールハンドジェルメーカーのピュレル(Purell)社がトップ3社に選ばれましたが、これは理由を説明する必要もないと思われます。

上記の信頼できるブランドの商品も含め、この時期に量的・値段的に最も高いレベルで消費者のニーズに応えてくれた小売企業はどこかという問い対して以下のような回答結果となりました。

◎最も信頼できる小売企業

小売企業

シェア

①ウォルマート(Walmart)

18%

②アマゾン(Amazon)

6%

②ターゲット(Target)

6%

④クローガー(Kroger)

3%

④コストコ(Costco)

3%

回答者からは全部で67社の企業が選ばれましたが、やはり世界一の小売企業でありながら、デジタルへの投資を怠ることなく伸び続けてきたウォルマートの圧倒的な強さが印象的です。

オンラインでトップを走り実店舗へのシフトを強力に進めているアマゾンとウォルマートが今回の非常時においても高い信頼を勝ち得ていることから、アメリカの小売り市場はこれからも当分ウォルマートとアマゾンを中心に動いて行くと思われますので注目をして行きたいと思います。

新型コロナウイルスの1日も早い収束を祈るばかりです。


(2020.4.3配信/記事作成:イオンコンパス(株)営業戦略部)

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