大躍進!米国ダラー・ストア

米国モールや小売企業の厳しい状況について、以前のメールマガジンでもご紹介してきましたが、今回は、こうした状況でも売上を伸ばしているダラー・ストアについてご紹介します。

まず、昨年9月のメールマガジン「米国モールの救世主?コワーキングビジネス」でもご紹介した、米国モールの厳しい状況に関するその後の情報です。

商業不動産情報サービスのレイス(Reis)社の調査によると、米国モールの空室率は2018年第2四半期に8.6%だったものが、第3四半期に9.1%と大幅に悪化し、最新の第4四半期(10月〜12月)はわずかに改善したものの9.0%ということで、相変わらず厳しい状況が続いているということです。

企業の連鎖的な倒産や一部店舗の閉鎖は2017年から続いており、商業不動産の調査会社大手のコースター(Costar)社によると、2017年の北米における小売り全体の店舗閉鎖面積の合計が1億200万平方フィートで過去最悪を記録したということです。さらに昨年末時点で同社が集計したデータによると、2018年の店舗閉鎖面積の合計は1億4,500万平方フィートということで、大幅な悪化が見込まれているということです。

倒産によりモールからの撤退を続けているシアーズ(Sears)、トイザラス(Toys”R”Us)やボントン(Bon-Ton)といった企業の代わりに、各モール運営会社は新たなテナントの確保に躍起となっています。以前ご報告したコワーキングスペースを始め、人気食品スーパー、フィットネスクラブ、ホテルといったこれまでになかった業態を新たなテナントとして誘致することで回復を図っていますが、まだまだ全体の数値の改善には至っていないようです。

アメリカの小売業界のシンクタンク大手のコアサイト・リサーチ(Coresight Research)社によると、2018年1月01日から11月02日までの北米における店舗閉鎖は5,006店舗で、新規オープンの2,846店舗を大きく上回っているという調査結果を発表しています。

以下が店舗閉鎖数の大きい代表的企業です。

順位

店舗名

閉店数

1

トイザラス(Toys "R" Us)

881

2

ウォルグリーンズ(Walgreens)

600

3

シアーズ・Kマート(Sears & Kmart)

472

4

マットレスファーム(Mattress Firm)

388

5

アセナ・リテール・グループ(Ascena Retail Group)

267

6

ボントン(Bon-Ton Stores)

260

7

ベストバイ(Best Buy)

250

8

シグネット・ジュエラーズ(Signet Jewelers)

200

8

ジーエヌシー(GNC)

200

10

クレアーズ(Claire's)

132

※Coresight Research社データ

また、昨年12月のメールマガジン「2019年注目のデジタル・ネイティブ・ブランドは?」でもご報告した通り、D2Cという新たな直販ビジネスモデルの躍進も、従来型の店舗の低迷に拍車をかけているようです。

ただ、このような厳しい状況の中で、「ダラー・ストア」と呼ばれる低価格訴求型店舗が堅実に業績を伸ばしています。

以下は前述のCoresight Research社による、新規店舗オープン数の大きい企業のリストです。

順位

店舗名

新店舗数

1

ダラー・ゼネラル(Dollar General)

900

2

ダラー・ツリー(Dolla Tree)

276

3

アルディ(Aldi)

200

4

ファイブ・ビロウ(Five Below)

125

5

アルタ(Ulta)

100

5

オー・バッグ(O Bag)

100

7

ロス・ストアーズ(Ross Stores)

99

8

ギャップ(Gap)

90

8

ウォルマート(Walmart)

90

10

TJXカンパニー(TJX Companies)

87

※Coresight Research社データ

アメリカの非営利の研究機関のILSRによると、北米では、現在ダラー・ストアと呼ばれる店舗は約30,000店舗あるということで、この数字はウォルマートとマクドナルドの店舗数の合計よりも多いということです。また、2011年にはダラー・ストアの店舗数は約20,000店舗だったことから、その急速な成長が伺えます。

その中でもトップのダラー・ゼネラルは、2018年1月から11月で約900店舗を新規出店しており、2019年には新たに975店舗の出店を計画しています。 2018年11月現在北米44州で15,227店舗を展開しており、28年連続で既存店売上のプラス計上を達成しています。

同社は、人口2万人以下で平均年収35,000ドル以下の比較的低所得者層の住む都市を選び、地元の食品スーパーやビッグボックスストア(ウォルマート等)から数マイル離れた場所を優先的に選ぶという出店戦略をとっています。不要な競合を避けながらも強力な新規店舗を出店させることにより、現在ではアメリカ国民の約4分の3がダラー・ゼネラルのいずれかの店舗から5マイル以内に住んでいるということです。

さらに、2017年4月のメールマガジン「実店舗の栄枯盛衰・・・北米小売企業の最新事情」で、注目企業としてご紹介したファイブ・ビロー(Five Below)社は、その後も確実に業績を伸ばしており、前回ご紹介時の522店舗から、746店舗にまで伸ばしました。また、昨年11月にはディスカウント系店舗としては異例といわれる、マンハッタンへの旗艦店の設置を11、000平方フィートの店舗により、実現しています。2018年まで11年間連続既存店売上でプラス計上を達成するなど絶好調をキープしています。同社は将来的に2,500店舗まで拠点数を伸ばしていく予定ということです。

ただ商品を安く提供するだけでなく、ダラー・ゼネラルもファイブ・ビローもセルフスキャンのテストを進めており、デジタル化への対応にもぬかりは無いようです。

今後も好調なダラー・ストアに注目をしていきたいと思います。

(2019.1.15配信)

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