2017年度のアマゾンの米国におけるオンラインショッピングの売り上げシェアが調査会社から発表されましたので、ご紹介します。また、昨年7月のメールマガジン「本格到来!ネットもリアル店舗も『アマゾン時代』」でご紹介した食品小売りを中心とした実店舗を活用した取り組みや、アパレル分野を中心としたプライベートブランド(PB)のシェア拡大などについての最新情報をご紹介します。
昨年7月のメールマガジンにて、2016年度の状況について取り上げた際、アマゾンのオンラインショッピングの売上シェアが米国の43%に達し、1つの企業が特定分野において40%以上のシェアを占めるということはこれまでになかったことであるとご紹介しました。eコマース市場の調査会社であるOne Click Retail社の最新データによると、2017年度のアマゾンのオンラインシェアは昨年の43%から44%にアップしたとのことです。
昨年までの大幅な伸び率〜2012年(25.4%)、2013年(26.6%)、2014年(29.2%)、2015年(33%)と比べると、ペースダウンしているかのように見えますが、既に40%を超えたシェアの中での更なるアップということ自体が画期的なことであるということです。
アマゾンはこれまでに様々な事業分野に進出をしていますが、特に食品とアパレルの小売りにおいて昨年から大きな変化が見られますので、ぞれぞれの状況をご紹介します。
≪食品小売りにおけるオンラインでの販売シェア≫
前述のOne Click Retail社の調査によると、アマゾンの2017年のシェアは18%でトップとなっており、2位のウォルマート(Walmart)の9%を大きく上回る結果となりました。アマゾンがオンラインによる生鮮食料品の販売を行っている「アマゾン・フレッシュ」では、昨年1月期の週間平均売上高が約300万ドルであったのに対し、約1年後の12月期の平均売り上高が約700万ドルにまで伸びています。食品小売りのオンライン市場においては既に押しも押されもしないリーディング企業となっていることが分かります。
しかしながら、米国食品小売り全体の売り上げに占めるオンラインの割合はわずか3%ほどです。現在実店舗の食品小売り市場で圧倒的なシェアを持つウォルマートの牙城に迫るための最初の大きなステップとして、昨年のホールフーズ買収が行われました。このホールフーズの買収により、アマゾンの食品小売業への本格的な参入となりました。
以下は、データ分析会社であるStatistica社による2016年の米国における食品小売り全体のマーケットシェアです。
米国食品小売りマーケットシェア(2016年)
1 | ウォルマート(Walmart) | 17.3% |
2 | クローガー(Kroger) | 8.9% |
4 | コストコ(Costco) | 5.1% |
5 | サムズクラブ(Sam's Club) | 3.4% |
9 | ホールフーズ(Whole Foods) | 1.7% |
21 | アマゾン(Amazon) | 0.8% |
*Statistica社データ
8,000億ドルと言われる米国の食品小売市場の17.3%をウォルマートが占めており、傘下のサムズクラブ(Sam’s Club)と合わせると20%を超えるシェアを誇ります。それに対してアマゾンは、昨年買収したホールフーズと合わせても3%に満たない数値となっています。しかしながら今後に向けて、今年の1月に満を持して公開されたレジ無しコンビニの「アマゾン・ゴー」の継続的展開や、ホールフーズ店舗をプライム会員向けの食料品配送拠点として拡大したり、オンライン注文へのピックアップ拠点として整備を進めるなど、シェアの拡大に向けた取り組みが着々と進んでいます。
≪アパレル≫
世界的市場調査会社であるThe NPD Groupの報告では、昨年1年間の米国におけるアパレル全体の売り上げは、前年比で約2%下がり、約2,150億ドルであったとのことです。一方で、オンラインでの売り上げは約4%アップし、アパレル全体の売上の約21%を占めるようになったということで、ますますショッピングのオンライン化が進行しています。
小売業界のシンクタンクであるCoresight Research社が2018年1月に発表したデータによると、過去1年間にインターネットのユーザーが、オンラインにてアパレル商品(シューズを含む)を購入した店舗とその割合は以下の表の通りでした。
順位 | 企業名 | シェア |
1 | ウォルマート(Walmart) | 41.8% |
2 | アマゾン(Amazon) | 37.4% |
3 | ターゲット(Target) | 37.3% |
4 | コールズ(Kohl's) | 32.9% |
5 | T.J.マックス(TJ.Maxx) | 25.3% |
※Coresight Research社データ
前年まで2位だったターゲット(Target)に代わり、アマゾンが僅差で2位になりました。
3年前に比べてアマゾンでのアパレル購入額が増えたと回答した消費者を対象にCoresight Research社が、どのブランドからアマゾンに乗り換えたのかを調査した結果、ターゲットが最も多く30.3%、次いでウォルマートが24.9%、3番目にコールズ(Kohl’s)の23.5%ということで、まさに上記の表の上位にランクされている企業からの乗り換えによりシェアを伸ばしていることが分かります。
アマゾンのマーケットプレイスであるアマゾン・ドットコム(Amazon.com)内のアパレルの取り扱いのうち、約89%がサードパーティ企業(アマゾン以外の企業)によるもので、そのトップがナイキ(Nike)の16.8%、2位がアンダーアーマー
(Under Armour)の13.8%、3位はヘインズ(Hanes)の12.9%となっています。
アマゾンはこれまで、同社のマーケットプレイスにおいてサードパーティ企業と消費者を結びつける役割を担ってきましたが、2016年にプライベートブランド「ラーク&ロー(Lark & Ro)」の導入と成功をきっかけに、差別化と高収益の見込めるプライベートブランドへのシフトに力を入れるようになりました。
その結果、同社マーケットプレイスにおけるアパレルの部門において、アマゾンのプライベートブランドの取り扱いは
約11%となり、4番目となりました。
最後に、データ分析大手のL2社が、2017年末時点のアマゾンのプライベートブランドのリストを発表しているのでご紹介します。この時点でアマゾンのプライベートブランドは41種類で、そのうちアパレル関連が29種類を占めています。
L2社によると、アマゾンのプライベートブランドの中で最も成功しているのはアパレル関連ということで、今後もアパレルを中心としたプライベートブランドの強化により、他社にとって大きな脅威になるだろうと予測しています。
アマゾンのプライベートブランドには、同社の社名を冠しないものが多く、更に外部への公表をせずにいつの間にか市場に出ることがあるため、同社のプライベートブランドについての正確なデータをつかむことは非常に困難と言われています。実際に2月には何の広告も無く、処方箋が不要なプライベートブランドの一般用医薬品(OTC医薬品)の販売を開始しています。
オンラインでもオフラインでもシェア拡大を続けるアマゾンですが、今後のプライベートブランド商品への取り組みに特に注目をしていきたいと思います。
アマゾンのプライベートブランドリスト(2017年末時点)
ブランド名 | 商品タイプ | |
◎アパレル&シューズ | ||
1 | レベル・キャニオン(Rebel Canyon) | カジュアル・スポーツウェア |
2 | グッドスポート(Goodsport) | スポーツウェア |
3 | ピーク・ベロシティ(Peak Velocity) | スポーツウェア |
4 | コア10(Core 10) | レディースアクティブウェア |
5 | トレイルサイド・サプライ(Trailside Supply Co.) | メンズアウターウェア |
6 | クラフテド・カラー(Crafted Collar) | メンズシャツ |
7 | ボタンド・ダウン(Buttoned Down) | メンズシャツ |
8 | グッドスレッズ(Goodthreads) | メンズシャツ&パンツ |
9 | アラベラ(Arabella) | レディースランジェリー |
10 | フランクリン&フリーマン(Franklin & Freeman) | メンズシューズ |
11 | ジェームズ&エリン(James & Erin) | レディースウェア |
12 | ラーク & ロー(Lark & Ro) | レディースウェア |
13 | メイ(Mae) | レディースランジェリー |
14 | ノース・イレブン(North Eleven) | レディーススカーフ |
15 | スカウト+ロー(Scout + Ro) | 子供服 |
16 | ソサイエティ・ニューヨーク(Society New York) | レディースウェア |
17 | フランクリン・テイラード(Franklin Tailored) | メンズウェア |
18 | デイリー・リチュアル(Daily Ritual) | レディースウェア |
19 | スミッテン(Smitten) | 医療用ユニフォーム |
20 | 206コレクティブ(206 Collective) | シューズ |
21 | ピース・ラブ・マキシ(Peace Love Maxi) | レディースウェア |
22 | パリ・サンデー(Paris Sunday) | レディースウェア |
23 | ベルベットロープ(Velvet Rope) | レディースウェア |
24 | エッセンシャリスト(Essentialist) | レディースウェア |
25 | コースタルブルー(Coastal Blue) | レディースウェア |
26 | ヘイル(HALE) | デニム |
27 | エラムーン(Ella Moon) | レディースウェア |
28 | エマ・ライリー(Emma Riley) | 子供服 |
29 | ファインド(find) | レディースウェア |
◎CPG(消費財) | ||
1 | アマゾン・エレメンツ(Amazon Elements) | 日用品 |
2 | プレスト!(Presto!) | 日用品 |
3 | ママベア(Mama Bear) | ベビー用品 |
◎食品・飲料品 | ||
1 | ハッピーベリー(Happy Belly) | コーヒー、調味料、ミネラルウォーター |
2 | ウィキッドリー・プライム(Wickedly Prime) | スナック、ジャム、スープ |
◎パーツ類 | ||
1 | スモール・パーツ(Small Parts) | パーツ類 |
◎電気製品 | ||
1 | アマゾンベーシック(Amazon Basics) | 日用電化製品・パーツ |
2 | ニュープロ(Nupro) | テック・アクセサリー |
◎家庭用品 | ||
1 | リベット(Rivet) | 家具、照明器具 |
2 | ストーン&ビーム(Stone & Beam) | 家具、照明器具 |
3 | ピンゾン(Pinzon) | ベッド、リネン |
※L2社データ
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