2017年の北米流通業界10大ニュース

流通業界にとって激動の2017年が過ぎ、新しい年を迎えました。

新年第一弾のメールマガジンとして、アメリカの流通・小売りの専門誌のチェーンストア・エイジ(Chain Store Age)社が、2017年の10大ニュースを特集していますので、昨年の振り返りとしてご紹介します。

まず、上位1〜5位は以下の通りです。

順位

トピックス

概要

1

アマゾンによる
ホールフーズ買収

6月にアマゾン(Amazon)がホールフーズを137億ドルで買収すると発表し、世界的なニュースとなりました。この買収により、アマゾンが食品の小売りに本格的に乗り出すこととなり、ウォルマートをはじめとする多くの食品小売企業にとって大きな脅威となっています。

2

ウォルマートの
ラストマイルへの
取り組み

ウォルマート(Walmart)の多様なラストマイルへの取り組みがスタートし、話題になりました。アマゾンに対抗するため、オンライン専門企業のジェットドットコム(Jet.com)の買収を行ったり、オンラインで購入した食品を店舗のパーキングで車から降りることなく受け取れる「ウォルマート・グローサリー」の急速な拡大が行われています。「ウォルマート・グローサリー」はアマゾンの本拠地であるシアトルにて1,000店舗目のサービスを開始するなど対抗姿勢を明確にしており、現在全米で1,100店舗にまで拡大しています。また、同じくオンラインで購入したものを、店内のピックアップタワーで受け取れるサービスも開始しており、こちらも500店舗まで拡大する予定です。更に、オンラインで注文した商品を、顧客の自宅内に届ける新たなサービスもスタートしています。具体的には、ホームセキュリティ企業と宅配専門企業との協力のもとに運用に向けた配送テストを行ったり、従業員が帰宅ルートで商品配達を行ったりする取り組みです。

オムニチャネルにとって最も重要なラストマイルへの取り組みにおいても、ウォルマートの多彩さは世界一かもしれません。

3

サイバーマンデーが
歴史的売上

サイバーマンデーの売上は、65億9,000万ドルで、前年の56億ドルに比べて16.8%の増加となり、過去最高を記録しました。

また、2016年まではブラックフライデーが1年間で一番の売り上げを誇るセール日でしたが、2017年は初めてサイバーマンデーが年間1位の売上日を記録した年となりました。

4

ターゲットが
即日配達を強化

ターゲットが食品の即日配達の専門企業であるシプツ(Shipt)を、5億5,000万ドルで買収することが発表されました。インスタカート(Instacart)と即配マーケットを2分する企業である「シプツ」買収により、アマゾンやウォルマートといった先行企業に対し、ターゲットがオンライン市場での存在感を大幅に高めることになりそうです。ターゲットは、実店舗においても積極的な取り組みを行っており、都市型となる小型の新フォーマットの実験店舗もオープンさせています。

5

セブン・イレブンが
モバイル対応強化

コンビニ・マーケットのシェアでトップを走るセブン・イレブン(7-Eleven)が、モバイルアプリを利用したオンラインでの注文、ピックアップ方法の選択から支払いまでを一括で行うセブン・イレブン・ナウ(7-ElevenNow)のテストを開始したと報じられました。まず、ダラスの10店舗で開始したとされており、2018年には全店で利用可能にするとのことです。

1位はアマゾンによるホールフーズの買収でしたが、2017年はいわゆるM&A(企業間の買収と合併)が盛んに行われたことが一つの特徴でした。最近では12月に、かねてから噂になっていたCVSヘルス(CVS  Health)による医療保険大手のエトナ(Aetna)の買収が正式に発表され、北米のヘルスケア産業に大きな影響が出てくると予想されています。

2位はウォルマートのラストマイルへの取り組みでした。ウォルマートはオンラインへの取り組み強化に力を入れていますが、その顕著な例として昨年12月に企業登録名を「Walmart Stores」から「Walmart」へ変更したことが挙げられます。これは実店舗をイメージさせる「Stores」を取り除き、実店舗だけでなく、オンラインでも競合に打ち勝っていくという意思の表れだと思われます。実際に、5月に配信したメールマガジン「競争激化でも売り上げを伸ばす!ウォルマートの価格戦略」では、当時(2016年第4四半期)、オンライン売り上げの伸び率が29%であったものが、2017年第3四半期は50%を超えています。

今後も、アマゾン、ウォルマートの2社を中心とした競合には注目して行きたいと思います。

続いて、6〜10位は以下の通りです。

6

ウォルマートが
ロボットで在庫管理

ウォルマート(Walmart)が、店内の商品棚の在庫管理をはじめ、商品ディスプレイ情報のチェックなどをするロボットの運用実験を開始しました。アーカンソー、ペンシルベニア、カリフォルニアの一部店舗で開始しており、まずは50店舗への拡大を予定しているということです。人員削減が目的ではなく、スタッフの負担の削減が目的とのことです。

7

ペットスマートがデジタル強化

全米50州で1,600店舗以上を展開するペット専門店のペットスマート(Pet Smart)が、オンラインのペット用品販売企業のチューイー(Chewy)を買収しました。ウォルマートによるJet.comの買収を上回る規模の取引とのことです。チューイーは、2011年創業の企業で、右肩上がりの成績を誇る企業です。この買収により、オンラインマーケットで先行するライバル企業のペトコ(Petco)との競合が更に熾烈になるとみられています。

8

シアーズが
独自ブランド家電を
アマゾンで販売

シアーズ(Sears)が同社のオリジナル家電ブランドである「Kenmore」のアマゾン・マーケットプレイス上での販売を開始しました。 

経営不振により店舗の閉鎖が続いているシアーズですが、アマゾンとの提携は、同社製品の販売チャネルを増やすことや、アマゾンのIoT技術を導入することで自社による開発の手間を省く目的があるようです。
12月に入り、車用品ブランドの「Die Hard」もアマゾンにて販売を開始しました。しかしながら第3四半期の売り上げは前年比で15.3%の減少となっており、同社の経営状況は相変わらず不振の状況です。

9

トイザらスが
デジタルアプリで
AR体験

9月に経営破たんしたトイザらス(Toys “R” Us)ですが、再生を目指して新たな取り組みをスタートしています。AR(拡張現実)アプリによって店内でゲーム体験ができる取り組みを23店舗にて開始しています。

10

マイヤーの食品宅配が50万件を突破

ミシガン州を拠点に、北米中東部6州にて235店舗を展開するマイヤー(Meijer)は、2016年9月に食品配達の専門企業であるシプツ(Shipt)と提携し、デトロイトの25店舗で食品の宅配をスタートしました。その後、わずか5か月弱の期間に200以上の店舗でサービスを開始し、宅配数が50万件を突破したということです。

今回のチェーンストア・エイジ社のランキングでは、いずれもオンラインやデジタルに関連した内容となっているのが、2017年の大きな特徴の一つだと言えます。なお、6月のリドルによるアメリカ初進出も大きなニュースでしたが、今回のランキングに上がっていないのは意外な結果といえるかもしれません。

また、8位、9位に大量に店舗を閉鎖した企業と、破たんした企業に関するニュースがランキングしていますが、2017年の小売業の最大の特徴は、かつてないような企業の倒産と店舗の閉鎖だったのではないでしょうか。4月のメールマガジン「実店舗の栄枯盛衰・・・北米小売企業の最新事情」にて、4月時点の店舗閉鎖の状況をご報告しましたが、世界的ニュース専門チャンネルであるCNBCの電子版の最新号によると、2017年の店舗閉鎖はほぼ7,000店舗で、前年比で229%にもなるとのことです。この店舗閉鎖は、2018年も続いていくのでしょうか。

本年も、メールマガジンを通して最新の情報を配信していきたいと思いますので、引き続きのご愛読をよろしくお願いいたします。


(2017.12.28配信)

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